■最新作は『彼女がその名を知らない鳥たち』

 その若松さんの時代から、我々は“人間ってなんじゃい”って永遠に答えが出ないものを追い続けて、映画にしてきた。その中で、人の心に突き刺さるものや、世の中がひっくり返るようなものを何とか作ってやろう。これが、モチベーションです。だから、綺麗事ばかりが、溢れる中で、人間の剥き出しの感情をしっかりと映画を通して描いていきたい。

 今回の映画『彼女がその名を知らない鳥たち』だって、人の嫌なところをこれでもかと描いています(笑)。クレームばかりをつける嫌な女と、下劣な男の愛の物語なんですが、演じてもらった蒼井優さんと、阿部サダヲさん、2人ともかなりひどい役柄(笑)。他にも、竹野内豊さん、松坂桃李さんにはクズな男と、ゲスな男を演じてもらっています(笑)。

 でも、最後にその闇の部分が実はすごく美しく感じる。見え方が、最初と最後で全然変わってくる。闇があるからこそ、光るもの。そういうものを、これからも映画を通じて伝えられたらなと思っています。

撮影/弦巻 勝

白石和彌(しらいし・かずや)
1974年12月17日生まれ。北海道出身。95年に中村幻児監督主催の映像塾に参加。その後、若松孝二監督に師事し、行定勲監督、犬童一心監督などの助監督を務め、10年に『ロストパラダイス・イン・トーキョー』で長編監督デビュー。13年の『凶悪』では、新藤兼人賞2013金賞。第37回日本アカデミー賞優秀作品賞、脚本賞など各映画賞を席巻。18年春には、役所広司主演『孤狼の血』の公開を控える。

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