貯金500万円で「老後を楽しく暮らす方法」の画像
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 誰もが不安を感じる引退後の生活費。「そんな額はとても……」と嘆く前に、本当に必要な金額と情報を知るべし!

■退職時に3000万円の貯金は必要!?

 60歳の退職時に、3000万円の貯蓄がないと老後は破綻する! そんな“標語”をよく耳にする一方、老後を間近に控えた50代であっても、約3割の世帯が「貯蓄ゼロ」(金融広報中央委員会)という現実がある。もちろん、貯金がゼロでも「退職金があるじゃないか」と考えるだろう。しかし、日本の労働人口の3割しか占めない大企業でも、退職金の平均は2000万円。残り7割の一般市民にとって、3000万円のハードルはかなり高いといわざるをえない。事実、本誌でアンケートを取った結果、読者で最も多かった貯蓄額は500万円。これでは3000万円にはほど遠く、定年まで地道に働いても悲惨な老後が待っているとなると、暗~い気持ちになってしまう。

 では、貯金500万円で十分な老後を過ごすにはいったい、どうすればいいのか。実はまず、〈退職するまでに3000万円の貯蓄が必要〉という、ちまたの常識を疑う必要がある。そもそも、この常識の根拠は、生命保険文化センターのアンケート調査にある。これは、夫婦2人で老後にゆとりある生活を送るには、月36万6000円の収入が必要だという調査結果を基に、その暮らしを平均寿命まで維持するには、年金の収入では3000万円不足するという考えから弾き出された数字なのだ。

■年金、定年後の常識破りと「老後設計の基本公式」

『人生にお金はいくら必要か』(東洋経済新報社、共著)の著書などで知られる経済評論家の山崎元氏は、「個人の生活を一律的かつ平均的に出しているところに無理があります。貯蓄額に合わせて分相応な生活と計画的なお金の使い方を心がけていれば、そうひどい老後にならないでしょう」と、心強い言葉をくれるが、では、具体的に、どうすればいいのか。まず見てほしいのが、下の方程式。山崎氏がズバリ、「老後設計の基本公式」と呼ぶものだ。「この公式のいいところは、個々の貯蓄額などに合わせて現実的な“解”を求められるところ。もし、公式に当てはめる前提条件(数字)に変化がありそうでも、簡単に計算し直すことができます」(前同)

●厚生年金、国民年金の受給年齢を遅らせる

 ただ、この公式を説明する前に、“2つの常識”を見直す必要がありそうだ。1つ目の常識は、公的年金(厚生年金、国民年金)を支給開始年齢の65歳から受給することである。「公的年金は受給開始を遅らせることによって、1か月当たり0.7%も受給額を増やせます。受給年齢は70歳までの5年間遅らせることができ、その場合の増額幅は42%にもなるんです。たとえば、65歳支給開始年齢時に年間200万円の年金を受給できる人なら、最大の増額率を反映した場合、年に84万円も多い284万円を受け取ることができます」(同)

 つまり、70歳から受給すれば、民間の個人年金に加入しているのと同じような上積み効果が期待できるわけだ。個人それぞれの年金支給額は、定期的に送付される『ねんきん定期便』で確認できるから、その金額を1.42倍してみればいい。これで70歳からの年金収入が、いくらになるかが分かる。山崎氏によると、82歳まで受給すれば、生涯の年金受給額は、通常のケースより多くなるという。

●奥さんにパートで働いてもらう手も

「問題は、定年退職した60歳から70歳までの“赤字分”を、どう埋めたらいいかですが、それを埋めるには働くのが一番です。再雇用制度がある会社なら、それを利用してもいいですし、現役時代に培ったスキルを生かせる仕事に、新たに就くのもいいでしょう」(前同)

 この、リタイア後も働くということが、2つ目の常識破りだ。実は、この選択には思わぬ“特典”までついてくると話すのは、大学病院の看護師だ。「男性の場合、定年後に体調を崩しやすくなったり、あるいはボケやすくなるというケースが少なくありません。急に仕事がなくなって時間を持て余し、没頭できる趣味を見つけられず、生活ペースを崩してしまうんです。体が動くうちは働き続けることが、健康をキープするうえで重要な要素と言えます」

 また、必ずしも男性が働かなければいけないわけではなく、「専業主婦の奥さんにパートでもいいので働いてもらう」(前出の山崎氏)ことでもいいそうだ。

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