■トレーニングもできず、“引退するべき”と宣告

小橋「その通りです。今まで通りのトレーニングもできない。実際、いろいろな先生に相談しましたが、手術が成功しても“引退するべき”と宣告されました」

ゆま「そのときは、どう思われました?」

小橋「ひと言で言うと“失望”でしたね。つい先日、チャンピオンになったばかりなのに、なんで俺が?と。テッペンから、いきなり奈落の底に突き落とされたようで、とてもじゃないが、納得できなかったです。ゆまさんも分かると思うんですが、がんになると肉体的にはもちろん、精神的にもヤラれてしまうんですよね……」

ゆま「すごく共感できます。私も宣告されてから、とにかく精神的に苦しくて。誰にも何の連絡もせず、上野から東北地方へ向けて、一人で旅に出たんです……」

小橋「誰にも連絡を取らないのはダメですよ(笑)! でも、その気持ちはすごく分かります。そこまで追い込まれますよね」

ゆま「はい」

小橋「手術の前日にね。夜の8時ぐらいに先生が僕の病室に来て、こう言われたんです。“僕は小橋さんを復帰させるためじゃなく、生きるために手術をします”と。その言葉が、僕にはすごくずっしりと重かったですね」

ゆま「分かります。それでも小橋さんは絶対無理といわれていたのに、その後、リハビリを続けて、ついにリングに戻られた。復帰したとき、リングから見た光景は、どうでしたか?」(次号につづく)

小橋建太(こばし・けんた)
1967年3月27日、京都府福知山市出身。87年、全日本プロレスに入団。90年代後半からトップレスラーとして大活躍し数々のタイトルを獲得する。GHCヘビー級王座にあった2年間に13度の防衛を果たし、「絶対王者」と呼ばれる。13年5月、現役引退。現在は、小児がんの患者をサポートする活動など、さまざまな活動を行う。

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