■同じ顔写真の免許証が2枚!?

C 僕は、これですね(そう言って財布から免許証を出す)。これで、部屋を借りるんですよ。

D あ、免許証、2枚ある。え、名前も住所も違うじゃないですか。

B 本当だ。でも、この写真、両方ともCさんですが、雰囲気はまた違いますね。どっちが本物なんですか?

C  それは、言えないですね。ただ、これで部屋を借りておいて、そこの金庫にお金を置いています。結局、信じられるのは自分だけってことで。やっぱり、一緒に「もしもし」しているグループにも怪しげな人はけっこういましたからね。

――具体的にどんな人がいたか、覚えていますか?

C 年齢不詳の、よく日に焼けたスーツ姿のおじさんとか。この人は、みんなを“ちゃん”づけで呼んでましたね。さっき話した、摘発の原因となった地下格闘家の周りの人も、考えれば怪しかったですよ。休憩時間に、最近ハマった脱法ハーブの話してたり。

――そんな感じなんですね。……って、Dさん、免許証、見過ぎですから!(一同苦笑)

D いや、どう見ても、どちらも本物にしか見えないですね。すげ~欲しい~。

A なんだ、欲しいのか。金額によったら、俺が口、聞いてやろうか?

――すいません。あの、この場で、そういう犯罪の相談事みたいなやり取りはやめてほしいんですけど……(一同笑)

■どうすれば被害者にならずにすむか?

――それでは、振り込め詐欺を実際にやって思ったこと、現在の詐欺事情を見て、どうすれば被害者にならずにすむか、考えを聞かせてください。

A うーん、まぁ、この犯罪はなくならないだろうってことだね。自分でやってみてもそう思うし、今の事情を見ていても、そう思う。最近、つきあいでお年寄りばっかりが来るような演歌の公演に行ったんだけどよ、絶対に携帯電話を鳴らさないでくれって言ってるのに、鳴らしちゃうんだよな。それって使い方も分かってなければ、鳴らさないでくれって自分が言われてることも分かってないんだよ。で、詐欺で騙されるのは、そういう人。当事者意識が希薄なんだろうな。そういう人は、この超高齢化社会でしばらくは増えるから。多少形を変えても、詐欺の被害もまた増えるだろうな。

B 自分は何も考えずにやってしまったので、分かったようなことは言えないですが、それでも詐欺はまず実刑です。何も知らずに実刑はキツいし、誰も信じられなくなる。絶対にやめましょう。ダメ、絶対!

C 僕も同意見ですね。たとえお金が残っても、失うものが多いです。本当の友達もいなくなりますから。人を騙す人間は、人を簡単に裏切るものですよ。

D そうですよねぇ。だからこそ、お金になるとも言える気がします。見張りの中には、受け子を抱き込んで、お金を取れなかったことにして、折半する人たちが最近、多いみたいです。番頭など、グループの上の人たちは芋づる式で逮捕されるのを嫌がって、現場には絶対に来ない。だから、実際のところ、現場で何が起こっているか、分からないわけじゃないですか。

A おいおい、お兄ちゃん、そのナリして、けっこう悪いこと言うなぁ。記者さん、こんな子、呼んじゃって大丈夫なんですか(笑)?

D パッと見で、ガラが悪い格好してる奴には任せられないって僕に教えてくれたのは、Aさんみたいな人でしたよ(笑)。とにかく、今の振り込め詐欺の現場は、かつてのBさんみたいに右も左も分からないような受け子を使って得た金を、上層部にバレないように、自分の懐に入れることが横行しているようですね。もはや仲間の誰も信用できない状態になっていると聞きます。あんな世界は、もう御免ですよ。

 さて、四者四様に語られた「振り込め詐欺犯座談会」。不適切発言のオンパレードで、肝を冷やしたが、これが許されざる犯罪であることは言うまでもない。読者諸兄も参考にして、卑劣な犯罪の被害者にならないように願いたい。

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