「子は天からの授かりもの」という言葉の通り、「何月何日に欲しい」というわけにはいかないのが「子ども」。晩婚化が進んでいる日本では、出産年齢も上がり続けており、出生順位別に母の平均年齢をみると、2015年は第1子は30.7歳、第2子は32.5歳、第3子は33.5歳となっており、1975年に比べ、それぞれ5.0歳、4.5歳、3.2歳上昇しています(厚生労働省、人口動態調査より)。年齢とともに妊娠する確率は減少していくので、出産年齢が上昇した現代では、妊活にまつわる知識を得ておくことはとても重要になります。今回は「子どもが欲しい」と感じたときにこそ、まず知っておきたいコトを紹介します。
■「子どもが欲しい」と感じるのはどんなとき?
「子どもが欲しい」と感じるタイミングは、男性と女性で、少し違っています。
●【男性編】
・親を安心させたい
孫の顔を見せることで親を喜ばせたり、自分が一人前なんだと安心してもらいたいという心情から、子どもが欲しいと思う男性が多いようです。実際に結婚したら親に「孫はまだ?」と催促される男性も多いのではないでしょうか。
・安定した仕事に就いたとき
「就職してある程度年数が経った」「自分の始めた仕事が軌道に乗った」などの理由で、経済的な見通しがある程度立ったとき、男性は子どもが欲しいと思うようです。「もう少し仕事で一人前になったら」と“待ち”をくらったことのある女性もいるのでは? 男性は一家の大黒柱という責任を感じているようです。
・親戚や友達の子を見たとき
つきあいの長い友人が結婚し、その奥さんとの間に子どもをもうけ、お祝いのために家にお邪魔したときなど、産まれたばかりのかわいい赤ちゃんと、幸せそうな友人の様子を見て、触発される男性もいるようです。その友人から「子どもっていいよ」とか「もっと仕事頑張らなきゃ」なんて言葉を聞いたりすることも、刺激になるのだとか。
・この人の子どもが欲しい!
純粋に妻を愛していて、この人とだったら子どもが欲しい!と、当然ですが、男性もそんな気持ちを持っています。
●【女性編】
・この人の子どもが欲しい!
好きな男性と自分との遺伝子を残したい、という強烈な欲求にかられることもあるようです。
・女性だから一度は……
子どもが産める性で生まれてきたのだから、一度は子どもを産んでみたい、と考える女性はとても多いです。
・タイムリミットがある
上記の「女性だから」という考えにも関連しますが、女性には妊娠・出産にあたり、タイムリミットがあるもの。結婚する前から、そのことはぼんやりと頭の片隅にあります。“このままいくと、この人と結婚することになりそうだけど、この人の子どもを産んでいいのかな?”……こう冷静に考えているのです。こうして結婚に至った女性は、出産の年齢も、ある程度計画しています。「この年までに1人は欲しい」と、やはり計画的です。または若いときに無理をしすぎて子宮系の疾病を持ってしまった場合など、特に「早く子どもが欲しい」と考えることがあります。
■一般的に、女性は何歳まで妊娠が可能なの?
さて、女性は一般的に何歳まで妊娠が可能なのでしょうか。個人差はありますが、日本生殖医学会によると、女性は一般的に、30歳を過ぎると妊娠率が低下してゆきます。35歳前後からは、妊娠率の低下に加え、流産率の増加も見られます。また年齢が上がると、妊娠22週以降の胎児や生後1か月以内の新生児の死亡率も上昇します。35歳以上での出産を高齢出産と呼びますが、国立社会保障・人口問題研究所の統計資料によると、35歳以上の出生数は1990年以降、上昇を続けており、2013年の45歳から49歳の出生数は1113人にものぼります。
■まずは何といっても「検診」
妊活の前に、まずは何をおいても行っておくべきなのは「検診」です。婦人科だけでなく一般的な健康診断を受けておき、健康状態に問題はないかをチェックしておきましょう。また一度だけでなく、婦人科系の疾病がないか、定期的に検診を受けることは、妊娠のためだけでなく、健康のためにとても重要です。
また結婚を控えている女性については「ブライダルチェック」という婦人科系の検診もあります。これは妊娠することを前提とした検査で、妊娠後にトラブルになるよう原因はないかを調べるためのものですが、結婚を控えていなくても、受診は可能です。
女性の不妊の原因には、排卵障害や子宮筋腫、卵管の閉塞などさまざまなものがありますが、忘れてはいけないのが男性側の不妊の原因。性機能障害や、精液の中の精子の数や運動率の低下などがあります。子どもを作るためには、女性だけでなく、男性にもまず検診を受けてもらっておいたほうが安心です。
■妊活その1「基礎体温」
基礎体温を測り、毎日グラフにつけることは、妊活を考えている女性にとって実は非常に大事なこと。まず、排卵日の2日前から排卵日までに性交渉があると、妊娠しやすいといわれています。月経が順調な状態であれば、月経後から排卵日までの「低温期」と、その後の「高温期」がきれいに分かれます。必ずしも最も体温が下がった日に排卵するわけではないのですが、この付近で排卵します。つまり基礎体温をつけることは、自分の月経のペースをつかみやすくなりますので、排卵日をある程度予測しやすくなるというメリットがあります。
妊活を考えていない女性にとっても、このように基礎体温を記録していくことで自分の月経が順調なのか、そうでないのかを知ることができます。
■妊活その2「規則正しい生活」
さて次に大事だと言われているのは、規則正しい生活。バランスの悪い食生活は、月経不順や、ホルモンバランスの乱れの原因になることもあります。デスクワークの方は、ウォーキングやヨガなどの適度な運動を定期的に取り入れるのもよいですね。また、しっかり寝ることも忘れずに。私たちの体は、睡眠中に傷ついた細胞を修復する働きがあり、その結果、疲れの回復をもたらします。
甘く見てはいけないのが「ストレス」です。身体の痛みや栄養の取りすぎ、または不足、そして心理的なもの……こうしたストレスにより、脳にある視床下部がこれに反応して、生殖ホルモンに影響を与えます。ストレスで月経不順になった、という経験のある方もいるのではないでしょうか。とにかく、よく寝て、よく動き、適度に食べましょう。これは女性だけでなく男性にもいえることです。
■妊活その3「夫婦で話し合い」
そして最も重要なのは、子どもについて「夫婦で話し合い」をすること。いつ頃までに欲しいと思っているのか、そもそも子どもを持ちたいと思っているのか、など、意外と結婚前にはちゃんと話していないものなんですよね。また、もし不妊治療が必要になったとき、二人でゴールを決めておくことも大事なこと。もし授からなかった場合、いつまで続けるか、そういったことを、折々で話し合い、一緒に人生を歩んでいきたいものですね。
■妊活で知られる芸能人
あまり身近な友人とは妊活の話はしないものですが、芸能界には妊活をオープンにしている芸能人も多いです。2017年7月、第1子妊娠を明らかにした「元モーニング娘。」の保田圭さん(36)は、年明けに出産予定と報じられていますが、4年にわたって妊活をしており、その様子をブログでつづっていたことが知られています。ホットヨガ通いや大豆プロテイン、野菜ジュースの摂取などで体質改善に取り組んでいました。
今年11月に夫・石田純一さん(63)との間に第3子の妊娠を発表した東尾理子さん(42)ですが、今回だけでなく第1子、第2子を授かる前には、それぞれ不妊治療に取り組んでいることをオープンにしていました。また、森三中の大島美幸さん(37)は、2014年5月から妊活に専念するために一時期仕事を休業していましたが、2015年2月、人工授精で第1子を授かり妊娠6か月であることを発表。同年6月、無事に男児を出産しました。
また、女優・タレントの矢沢心(36)さんと、日本人初のK-1世界王者・格闘家の魔裟斗(38)さんには、2歳と5歳の女の子がいますが、妊娠までに不妊治療を4年間続けていました。タイミング療法、人工授精、体外受精などを経験し、妊娠に至っています。
ロックバンド「RED WARRIORS」の元ボーカリスト、ダイアモンド☆ユカイさん(55)は“ファミリーを持つべく”再婚しましたが、のちの検査で自身が無精子症であることがわかりました。その後、長い不妊治療を経て、2010年2月、47歳にして待望の第1子に恵まれたのです。この年、授かった娘への想いを込めたミニアルバムも発表しています。さらに、2011年には双子の男児を授かっています。
■実際の不妊治療あれこれ
さて実際の不妊治療にはどのようなものがあるのでしょう。
・タイミング法
排卵日を診断して性交のタイミングを合わせる治療です。
・人工授精
男性から精液を採取し、運動している成熟精子だけを洗浄・回収して、女性が妊娠しやすい期間に細いチューブで子宮内にこれを注入して妊娠を試みる方法です。
・体外受精
採卵手術を行い、排卵前に体内から取り出した卵子と精子の受精を体外で行う治療です。受精が正常に起こり、細胞分裂を繰り返して発育した良好胚を、後日、膣の方から子宮内に胚移植します。採卵手術は、経膣エコーで卵胞液とともに卵子を吸引して行いますが、これに先立ち、排卵誘発剤が1週間前後使用されることがありますが、副作用が生じることもあります。
ほかにも、内服薬や注射で卵巣を刺激し、排卵を起こさせる「排卵誘発法」もあります。
■子どもができなくても、悩んではダメ
ここまで書いてきましたが、夫婦で子どもを持つことができないとわかった、頑張ったけど難しかった、というときもあります。男性も女性も、いろいろなことを思い落ち込むこともあるでしょう。そのようなとき「自分は普通じゃないんだ」など、他人と比べる必要はありません。SNSなどでは妊活中の女性による投稿などが多く見られますが、一旦こうしたSNSから距離を置き、雑音のないなかで、自分の人生と、夫婦のこれからをゆっくりと考えてみるのはいかがでしょうか。
「子どもを持たない」という選択肢もありますし、「養子縁組」という方法で子どもをお迎えするという選択肢もあるでしょう。配偶者の子どもでなければだめなのか、それとも二人で子どもを育てていきたいのか、よく話し合ってみましょう。
■まとめ
他人の生活と比べて「自分にないもの」を探しても、キリがありません。体質改善、規則正しい生活などのゆるい妊活から、不妊治療に踏み出すか否かは、専門医に相談をしてくださいね。(文・山本山子)