現在、「日本では3組の内1組の夫婦が離婚する」と言われているが、はたして本当なのだろうか? 近年では芸能人がテレビなどのメディアで離婚を発表したり、熟年離婚が報じられたりと、若男女問わず離婚する時代だ。その中でも割合が最も高いのは、沖縄県の30代の女性だった。ここでは「離婚率」というキーワードを元に、さまざまな離婚に対する問題を考えていきたい。
「離婚率」って、そもそもどんなデータ?
「離婚率」とは、厚生労働省の人口動態調査から知ることができるデータ。人口動態調査は、戸籍法が明治31年に制定され、登録制度が法体系的にも整備されたのを機会に、翌年の明治32年(1899年)から行われている。
日本全体の離婚率の算出方法は「年間離婚届出件数÷日本の人口×1000」で求められる。これは「人口千対」と呼ばれる数値で、「人口1000人に対する離婚件数」となる。
最も離婚率が高い年代は30~34歳の女性
内閣府が発表した「平成27年度版・少子化社会対策白書」によると、2013(平成25)年の日本の平均初婚年齢は夫が30.9歳、妻が29.3歳となっている。
そして2005年度で、夫婦が同居をやめたときの59歳までの年齢(5歳階級)別にみた離婚率(人口千対、同年別居)は以下だ。
夫
- ~19歳 0.15
- 20~24歳 2.99
- 25~29歳 6.63
- 30~34歳 8.18
- 35~39歳 7.65
- 40~44歳 6.29
- 45~49歳 4.96
- 50~54歳 3.52
- 55~59歳 2.25
妻
- ~19歳 0.56
- 20~24歳 4.85
- 25~29歳 8.73
- 30~34歳 9.48
- 35~39歳 7.76
- 40~44歳 5.85
- 45~49歳 4.01
- 50~54歳 2.36
- 55~59歳 1.38
夫婦ともに30~34歳がトップで、この世代では夫より妻のほうが離婚率が高い。離婚する夫婦のなかで、結婚から5年以内に離婚する女性が一番多い、ということになる。なぜ結婚から約5年以内の女性の離婚件数が多いのだろうか?
まずは離婚や再婚へのハードルが下がっているということが考えられる。「バツイチ」という言葉が世間に浸透し、離婚歴があったとしても世間の理解が得られるようになってきた。それもあり、「ダメなら離婚」と踏み切れるのだろう。
だがなぜ30代前半の女性の離婚率が高いのか? 出産したい女性にとって、高齢出産による母体への影響や流産の可能性、子育てにおける体力的な面を考えると、30代中頃までには妊娠・出産をしたいという理由があるのかもしれない。夫との結婚に何らかの問題がある場合、次のパートナーと結婚して出産を想定する女性なら決断は早めにしたい、というのは当然の考えだ。
景気や時代の流れととに配偶者がいても仕事を続ける女性が増え、経済的な不安があまりないというのも離婚を決心できる後押しになっているだろう。1986年に施行された男女雇用機会均等法のおかげもあり、まだ十分ではないにしても「働く」という面において男女の格差は少しずつ縮まってきている。総務省統計局の労働力調査(基本集計)によると、2016年の時点で共働きの夫婦の割合は約50%ほどという調査結果が出ている。単純に夫の稼ぎだけでは少ないからという理由も考えられるが、女性が働きやすい世の中になってきているのは間違いない。「三歩下がってついていく」という夫婦観はもはや過去の遺物なのだ。
沖縄の離婚率が高い理由とは?
都道府県別の離婚率ランキング
- ・第1位 沖縄県 2.59
- ・第2位 宮崎県 2.02
- ・第3位 大阪府 1.99
- ・第4位 北海道 1.97
- ・第5位 福岡県 1.93
(人口動態統計の県別離婚率、2017年9月15日公表)
ランキングで見ると明らかに沖縄県が高いのがわかる。第2位の宮崎県に比べ、0.5ポイントほどの差をつけている。なぜ沖縄県の離婚率がこれほどまでに高いのだろうか?
厚生労働省が発表した平成22年度の「出生に関する統計」の人口動態統計特殊報告の中にある「結婚期間が妊娠期間より短い出生」、いわゆる「できちゃった結婚」のデータを見ると、全国平均が25.3%なのに対し沖縄県は42.4%と非常に多い。
できちゃった婚に関するデータと初婚年齢にも相関関係が見られる。こちらも厚生労働省発表の「結婚期間が妊娠期間より短い出生の傾向」という資料を参照すると、10代(15~19歳)の約8割がデキ婚、20~24歳で約6割、25~29歳で約2割、30代(30~34歳・35~39歳)となっている。これは全国の統計なのでそのまま当てはまるわけではないが、沖縄県でもさほど変わらない傾向にあると考えられる。
また、沖縄県は婚姻率(年間婚姻届出件数÷日本の人口×1000)も非常に高いというデータが出ている。2014年度の全国の婚姻率が5.1に対し、1位が東京都の6.7、そして2位が沖縄県の6となっている。
離婚率が最も高い年代は30~34歳の女性、そして全国で離婚率が一番高い沖縄県。この2つの調査の結果を合わせると、「沖縄県の30~34歳の女性」が日本で最も離婚率が高いと言える。
さまざまな離婚の原因
離婚の申し立ての動機別割合
夫の申し立て
- 1位 性格が合わない
- 2位 異性関係
- 3位 家族・親族と折り合いが悪い
- 4位 浪費
- 5位 異常性格
- 6位 同居に応じない
- 7位 精神的虐待
- 8位 性的不満
- 9位 家庭を捨てて省みない
- 10位 暴力をふるう
妻の申し立て
- 1位 性格が合わない
- 2位 暴力をふるう
- 3位 異性関係
- 4位 生活費を渡さない
- 5位 精神的虐待
- 6位 浪費
- 7位 家庭を捨てて省みない
- 8位 家族・親族と折り合いが悪い
- 9位 酒を飲みすぎる
- 10位 異常性格
(司法統計からみた離婚の申し立ての動機別割合、平成10年より)
ひと言に離婚といっても多様な理由があるが、夫婦ともに最も多いのは「性格の不一致」。これにはさまざまな要因があり、細かい所だと食の好みや生活習慣の違いがズレに繋がる。金銭感覚の違いから来る経済的な問題も大きい。共働きの夫婦で、夫が家事をしない、というのも「性格の不一致」に含まれるだろう。
夫婦ともに、異性問題が離婚の原因になることも多い。生涯信用しようと思っていたパートナーに裏切られたとなれば、精神的苦痛は相当なもの。「つい出来心で」と言い訳されても、された側はたまったものではない。たった一回の不義で相手に愛想を尽かされたとしても何もおかしくはないのだ。
また、男女別に見ると、夫の不満として特徴的なのは「家族・親族と折り合いが悪い」という理由。核家族化が進んでいるとはいえ、「嫁」という漢字が示すように、妻が夫の実家に入るかたちを取る家庭も多く、姑、舅との関係がトラブルに発展するケースは後を絶たない。一方、妻の不満としては「暴力を振るう」や「生活費を渡さない」「酒を飲みすぎる」という理由が、目立つ結果となっている。夫が独身の頃と変わらぬ振る舞いを続けると、愛想を尽かされてしまうのだ。
実は離婚率は増加していない!?
離婚率の年次別推移
- 1990年 1.28
- 1991年 1.37
- 1992年 1.45
- 1993年 1.52
- 1994年 1.57
- 1995年 1.60
- 1996年 1.66
- 1997年 1.78
- 1998年 1.94
- 1999年 2.00
- 2000年 2.10
- 2001年 2.27
- 2002年 2.30
- 2003年 2.25
- 2004年 2.15
- 2005年 2.08
- 2006年 2.04
- 2007年 2.02
- 2008年 1.99
- 2009年 2.01
- 2010年 1.89
- 2011年 1.87
- 2012年 1.87
- 2013年 1.84
- 2014年 1.77
- 2015年 1.81
- 2016年 1.73
(厚生労働省、人口動態調査より)
日本の離婚率の推移を人口動態調査から見ると、離婚率は2002年以降、ゆるやかに減少している。「最近離婚するカップルって多くない?」というのはイメージで、ここ15年ほどのデータを見ると全体ではどちらも減少傾向となっている。
冒頭で「日本では3組の内1組の夫婦が離婚する」と言われていると書いたが、これは調査した同年に結婚した組数と離婚した組数の対比から算出された数字。実際のところ、離婚率は現象しているのである。
世界と比べると日本の離婚率は高くはない
ここまでは日本の離婚率について考察してきたが、世界の離婚率も紹介しておこう。
- 第1位 4.8ロシア
- 第2位 4.1ベラルーシ
- 第3位 3.2ジブラルタル
- 第3位 3.2リトアニア
- 第3位 3.2アメリカ
- 第6位 3.1モルドバ
- 第7位 2.9キューバ
- 第7位 2.9デンマーク
- 第9位 2.8中国
- 第9位 2.8ウクライナ
(ウィキペディア英語版 Divorce demographyより)
各国が調査を実施した年度にバラつきがあるため、正確な数字ではないが、102か国の中で離婚率が一番高いのはロシア。その下には東欧諸国がランクインし、アメリカが同率で3位だ(ジブラルタルはイギリスの海外領土で人口約3200人の小国)。アジアでは9位の中国がトップで、日本は38位となっている。
国際結婚は減少中だった!?
芸能界では今、ローラ、ベッキー、トリンドル玲奈、マギー、藤田ニコルなどの女性タレントや、ウエンツ瑛士、JOY、ユージ、城田優、関口メンディーなどの男性タレントが大活躍中。スポーツ界においても、ダルビッシュ有、ケンブリッジ飛鳥、サニブラウン・ハキームなどが好成績を収めている。いわゆるハーフやクオーターの人が増えている印象があるが、国際結婚は増えているのだろうか?
年次別婚姻件数(夫婦とも日本国籍/一方が外国籍)
- 1980年 (767441/7261)
- 1985年 (723669/12181)
- 1990年 (696512/25626)
- 1995年 (764161/27727)
- 2000年 (761875/36263)
- 2005年 (672784/41481)
- 2010年 (670007/30207)
- 2015年 (614180/20976)
(厚生省人口動態調査より)
日本国籍同士の結婚件数は1995年にピークを迎えているが、一方が外国籍の結婚は2005年がピーク。しかし、2005年から2015年の数字を比べると、日本国籍同士は微減だが、一方が外国籍の結婚は半分に激減。偽装結婚の取締りが強化されたことも考慮に入れる必要があるが、国際結婚は減っているといえる。
ちなみに2006年の国籍別データで見ると、多いのは中国(3658件)、韓国・朝鮮(3658件)、フィリピン(3522件)、米国(1305件)、タイ(1002件)の順。2003年には521万1725人だった訪日外国人数は、2016年に2403万9700人へと激増しているが、それによって国際結婚が増えたわけではないようだ。
まとめ
テレビや雑誌の情報をなんとなく受け取っていると、現在は「離婚がブーム」のように錯覚しがちだが、実態を調べてみると、むしろその逆だった。アベノミクスによって日本経済が復活してきたといわれている現在だが、庶民の経済的な不安感は、まだまだ拭えていないようだ。