安美錦VS豪風、幕内大ベテラン同士の「がっぷり四つ対談」の画像
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 今場所、ついに再入幕を果たした39歳と、彼が不在の間、最年長の看板を背負った38歳がトーク初顔合わせ。ハッケヨイ、のこった!

■最年長での再入幕!

――九州場所前の巡業、どう過ごされていましたか?

豪風(以下=豪) 相撲人気が復活して、巡業の数も増えてきました。移動、移動の毎日ですが、自分は(前日に)巡業先に乗り込んだら、その土地ごとにトレーニング場所を探して筋トレをしているんです。昨日の場合だと、今日の巡業をやっている体育館のジムで2時間くらい、地元の人たちと一緒に汗を流しました。

安美錦(以下=安) ストイックだなぁ……。俺も巡業先でトレーニングしたい気持ちはあるんだけど、(アキレス腱断裂の負傷以来)最近は土俵の中で鍛えるだけにしているんだよね。

――その安美錦関ですが、先の秋場所では十両2枚目で10勝を挙げて、優勝決定戦に進出。さらに幕内復帰も決めましたね!

豪 お帰りっ!

安 ありがとう(笑)。最年長での再入幕という記録はたまたまだけど、「やっと戻ってきた……」という感じだね。昨年の夏場所、アキレス腱を断裂して休場。十両に落ちてからの1年は、長いような短いような中身の濃い1年だった。途中、自分の相撲が取れなくなって、すごく悩んだけれど、「絶対に幕内に戻る」という気持ちだけは忘れずにいたつもりだ。だけど、まさか秋場所で、十両の優勝決定戦に出るとは思っていなかったなぁ。どうせなら、(同じく決定戦に出場した弟弟子の)誉富士と対戦してみたかったよ(笑)。

豪 安美(錦)関が帰ってくるまで、(幕内最年長の)自分が“番”を張っていましたよ! 安美関の場合、相撲が弱くなって十両に落ちたわけじゃなくて、大ケガが原因ですよね。そこから「這い上がろう!」という精神を持ち続けるのは、すごく難しいことだと思います。実は自分、安美関がリハビリに向かう姿をよく見かけていたんですよ。お互いの自宅が近いので、「今日も頑張っているんだな」って、陰ながらエールを送っていました。

■東北での高校生時代から接点があった2人

 現在、幕内力士の平均年齢は28~29歳。その中にあって奮闘しているのが、最年長、39歳の安美錦と38歳の豪風だ。安美錦は昨年のケガから見事に復帰。一方、171センチと幕内で最も小柄な豪風は、年齢を感じさせない素早い動きで、若手を翻弄している。1学年違いのこの2人、実は東北で過ごした高校時代から接点があったという。

豪 自分、高1のとき、安美関と対戦しているんです。

安 ウソだろ? 全然、覚えてないよ。

豪 東北新人大会の団体戦で対戦して、自分が負けたんですが、東北、特に青森県は相撲のレベルがメチャクチャ高いんですよ。そして次の年、国体を前にした青森県と秋田県の選手の合同合宿でも、一緒でした。社会人、大学生、高校生が集まって、稽古をしてチャンコを食べるんですが、一番格下の高校生は雑用が多くて、お昼のチャンコを食べた後はクタクタで昼寝をしないと体が持たないわけです。ところが、その貴重な昼寝の時間、安美関は本を読んでいた。

安 エッ? ヤバい本とかじゃないよね(笑)?

豪 「杉野森さん(安美錦の本名)、何読んでるんですか?」って聞いたら、自分は読んだことのないような小説だった。それ以来、安美関のことをずっと観察してるんですよ。だから、高卒で大相撲に入門すると聞いたときは、ちょっとビックリしたんです。

安 高3の頃は、体重が100キロちょっとで、ヒョロヒョロ(身長183センチ)だったからね。でも、高校生の頃から兄貴(元幕内・安壮富士)も入門していた安治川部屋(当時)で力士と一緒に稽古していたから、プロになることに抵抗がなかったのかもしれない。

豪 自分は当時、大相撲に行く気はなかったんです。身長が低かったし、実績もない。だから安美関みたいな細身の人が、あんなキツい世界に飛び込むなんて考えられないと思いました。でも当時から、右を取ったらデカい選手も引きずり回す力がありましたよね。

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