核家族化はいつから!? 少子化時代を迎えた「日本の家族」のリアルの画像
核家族化はいつから!? 少子化時代を迎えた「日本の家族」のリアルの画像

 核家族と聞いて、何を思い浮かべるだろう。具体的に説明するのは難しくとも「日本は核家族化が進んでいる」というイメージだけは、定着しているのではないだろうか。確かに、アニメの「サザエさん」のように三世代でひとつ屋根の下に暮らす家族は、今では少なくなったように見える。ここで改めて核家族の実態を探り、現代の家族はいったいどうなっているのか、その現実を知ろう。

■核家族とは夫婦と子どもだけの世帯のこと

   

 核家族という言葉が登場したのは、1940年代。アメリカが太平洋のビキニ環礁で核実験を行った1946年(昭和21年)の翌年あたりから流通し始めたようだ。言い始めたのはアメリカ人の人類学者ジョージ・マードック。世の中のすべての家族の基本になる単位という意味で、夫婦や親子だけで構成される家族のことをnuclear(=核)というワードを用い、「nuclear family」と表現した。

 さて、その核家族とは、具体的にどんな形態を表しているのだろう。「夫婦一組だけの世帯」、または「夫婦一組とその子どもだけの世帯」、父「親か母親とその子どもだけの世帯」などがこれに分類される。また、日本の内閣府によると、核家族とは「夫婦と未婚の子どもからなる家族」のこととしている。

 

●「核家族=子どもが少ない」ではない

 核家族と聞くと、子どもの数もせいぜい一人か二人をイメージする。しかし、子どもの人数については特に定義がもうけられていない。ということは、子が何人いても、親となる夫婦が家庭内に一組であれば、核家族ということになる。

●核家族以外の家族形態

 家族のカタチを定義する用語には、核家族以外に「大家族」や「複合家族」「拡大家族」などがある。親、子、孫だけでなく、たとえば従兄弟など親族の夫婦や家族もひとつ屋根の下で生活するパターンがこれらに入る。

■実は戦前から日本には核家族が存在した!

 

 核家族というと、とかく第二次世界大戦後の高度経済成長期から現代まで増えてきた家族の形態だと思われている。それまでは祖父母とその子ども夫婦、孫の三世代世帯が多かったが、子世代が独立してマイホームを構えて居住するようになり、核家族が増加したという見方だ。

 厚生労働省による「国民生活基礎調査<世帯数と平均世帯人数の年次推移>」のグラフを見ると、昭和中期以降、世帯の数は右肩上がりに増えているが、各世帯の構成人数は反比例して減り続けている。2009年(平成25)には、一世帯あたりの平均人数が2.51人を記録。この数字は、夫婦プラス一人子どもがいるかいないか、といったところだ。

 しかし、総務省が実施している国勢調査の「世帯類型別構成割合」における統計をチェックしてみると、意外な実態が浮かび上がってくる。確かに、三世代世帯の数は1980年(昭和55年)以降、急降下していった。しかし、同時に核家族世帯の割合も、1980年にピークを迎えて以降、ジワジワと減少傾向にある。

 もう少しさかのぼってみよう。第一回目の国勢調査が実施された1920年(大正9年)の結果見ると、このときすでに核家族世帯の割合は50%を超えていた。ただし、これは「割合」の数字であって「実数」は増加している。

■核家族を生んだ社会的背景とは?

 大正時代は、一人の女性が一生のうちに産む子どもの数は平均5人と子沢山だった。しかし、一つの住居の中に同居できる夫婦および世帯の数は、せいぜい2組だったため、長子以外の子どもたちは結婚すると実家を出て、自分の家を持つことになった。戦前日本にもすでに核家族が多かったのには、そういった背景があったようだ。

 では、戦後の核家族はどうだろう。戦後の子どもたちが両親の家を出て世帯を持つようになった理由のひとつには、日本の産業構造の変化が挙げられる。農業や漁業といった第一次産業がメインでなくなり、製造業や小売、サービス業に従事する人が増えたことから、人々が別の地域へ移り住むことが容易になった。

 また、人々を雇う企業も、拡大に伴って全国に支社や支店を持つように。するといわゆる転勤族が増え、親元を離れて生活する人が増加。都市部に人口が集中し、住宅事情も一戸建て中心からマンション住まいが中心に。戦前までは長男が家を継ぐ、家長制度が一般的だった。しかし、時代とともに家長制度は廃れ、プライバシー観の欧米化もあいまって、核家族化に繋がっていったと考えられる。

■核家族化が引き起こした問題点

 夫婦と子どもだけで居住するようになった結果、起こった弊害はいくつか挙げられるが、一番の問題は少子化だろう。同居する親や親戚から家事や育児のサポートを得られなくなった夫婦は、3人、4人と子どもをもうけ、面倒を見ることが難しくなった。現在は共働き世帯の増加に伴い、親対子だけの閉鎖された環境における育児のストレスが積もって、児童虐待に結びついているという面もある。要するに、義理の母親にあれこれ口出しされなくなったのはいいけれど、世代間の相互扶助機能が低下して、孤立する世帯が増えてきたということだろう。

 また、子どもにとって核家族化は、成長過程で幅広い世代の人とコミュニケーションをとるチャンスを逃すこととなる。地域交流の希薄化もあって、青少年の非行の遠因になっているという説も聞かれる。

■核家族化より深刻な単身世帯化

 

 上記のように、1980年(昭和55年)頃から三世代家族はもとより、核家族世帯の割合はジワジワと減っている。その代わり増えているのが、単独世帯と夫婦のみの世帯だ。単独世帯の割合は、昭和時代には20%を切っていたものの、2013年には26.5%に、夫婦のみの世帯は16%から23.2%まで伸びている。両者を合わせると49.7%になり、全世帯の約半分に、子どもがいないことになる。

 現在、核家族化以上に問題視されているのが、単身世帯の増加。子どもが巣立ち、伴侶に先立たれて単身化するケースもあれば、そもそも生涯未婚、生涯子なしのケースもある。現役時代にはさほど生活に困らなくとも、高齢になれば介護が必要になることも。単独で暮らしている人の孤立死の問題も深刻だ。

■まとめ

 

「核家族化」は戦後に始まった現象ではなかったが、現在はさらに「単独化」が進行中。今現在、核家族であったとしても、その先に待っているのは一人暮らしかもしれない。一人は気楽なものだが、何かあったときに助け合える相手が家の中にいないということは、ややもすれば生命の危険と背中合わせだ。この先、日本の家族像はどこへ向かうのか。今はその過渡期にあるのかもしれない。

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