■金本知憲監督がポジションをコロコロいじり…

 一方の阪神も、なかなか若手が伸びてこないという、巨人と同様の悩みを抱えているが、阪神OBの野球解説者・江本孟紀氏は、それでもまだ、若手については「巨人よりも阪神のほうがマシ」と、断言する。「実際に、イキのいい若手選手がどんどん出てきてますからね。ただ、問題はそれが長続きしないこと。一軍に上がった直後は、いい成績を挙げるけれども、すぐに打てなくなって替えられてしまうということの繰り返しが続いている」

 これは、金本知憲監督が選手のポジションをコロコロいじることが原因だともいわれているが、江本氏はそれだけではないと言う。「ポジションをいじられる選手のほうにも問題がある。期待に応える活躍をしないから替えられるんですよ」

■17年の阪神のドラフトが最高だった

 また、阪神OBの野球解説者・藪恵壹氏も、「このオフに、韓国で2年連続3割30本をマークしたロサリオを獲りましたが、それ以外に大きな補強をしていないのは、必要ないからです。将来性のある若手は多いですからね。高山俊、中谷将大、原口文仁、北條史也、糸原健斗などといった、ここ2年で頭角を現してきた選手たちが安定してくるようになれば、阪神はもっと強くなるはずです」

 それに加えて、17年の阪神のドラフトが最高だったと、藪氏は続ける。「ほとんどが大卒・社会人の有望な即戦力。若手の競争はますます激しくなるでしょう。今の阪神の選手は、とにかく練習しますから。私のいた頃とは比べものにならないくらいです(笑)」

■金本流と掛布流の対立

 しかし、その若手の育成に定評のあった掛布雅之二軍監督が去ったことは、不安要素の一つと取れなくもない。そこには、スパルタ式で厳しく育てる金本流と、選手の自主性に任せる掛布流の対立があったともいわれているが、「掛布二軍監督が選手を育てたと言いますが、一軍に定着している選手はあまりいない。本当の意味ではまだ、ちゃんと育てていなかったんじゃないかな」(同)

 結果的に金本流の「筋トレ至上主義」が、形の上では勝利したことになる。しかし、これに対しても、江本氏は疑問符をつける。「筋トレしたら本塁打を打てるなんてものじゃない。監督は、この辺を誤解しているような気がしますね」

■藤浪晋太郎の復活が不可欠

 しかし、今の阪神に不安要素がないわけではない。最大の問題点は「先発のコマ不足」だ。メッセンジャーに、いつまでもおんぶに抱っこではいられない。そこで両OBがキーマンとして挙げたのは、やはり“あの男”の名前だった。「阪神優勝には藤浪晋太郎の復活が不可欠」(江本氏)

 17年シーズン、59イニングを投げて53四死球(暴投5)と大スランプに見舞われた藤浪。その原因は何だったのか。藪氏は言う。「やっぱり原因はWBCだったように思うんですよね。WBCの使用球と日本の球との感覚の違いに戸惑ってしまった部分がある。私自身メジャーで使っていた球と日本の球の違いで調子を崩したことがありますから。なんて言うんですかね、重さが全然違う感じなんです。極端に言えば、軟式球と硬式球の違いみたいな感じ。まあ、元来の実力は抜群の投手ですから、それほど心配はしてはいませんが」

 巨人と阪神が優勝争いを繰り広げてこそ、プロ野球は盛り上がる。18年の両チームに期待しよう!

◆黒江透修(くろえ・ゆきのぶ)
1964年、読売巨人軍入団。内野手として巨人V9時代を支えた。引退後は、長嶋茂雄、広岡達朗、王貞治らの名監督を支える参謀役として名を馳せる。

◆江本孟紀(えもと・たけのり)
1970年に東映フライヤーズ入団、以降、南海、阪神で8年連続2ケタ勝利を挙げる活躍を果たす。引退後は、野球解説者、政治家などとしても活躍。

◆篠塚和典(しのづか・かずのり)
1976年、ドラフト1位で読売巨人軍入団。生涯打率3割を超える安打製造機、名二塁手として巨人の黄金期を支える。引退後は、巨人及び第2回WBC日本代表のコーチ、野球解説者として活躍。

◆藪恵壹(やぶ・けいいち)
1994年、阪神タイガースに入団し先発の要として活躍。2005年に渡米し、アスレチックス、ジャイアンツに在籍。引退後はコーチ、野球解説者として活躍。

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