■弾道ミサイルの配備も!?

 弾道ミサイル防衛の中核を担い、世界最強の防空能力を誇るイージス艦も、現在の6隻から8隻に増やすことが決定しているが、前出の井上氏は驚きの防衛策を提案する。「究極的には、日本も弾道ミサイルを保有すればよいのですよ。相手側と同じ装備を持つことが抑止力につながります。日本はH2という優秀なロケットを運用していますから、その気になれば弾道ミサイルを配備することが可能です」

 あまり知られていないことだが、北朝鮮と対峙する韓国は、自衛策として弾道ミサイルを保有している。「日本が一足飛びに弾道ミサイルを保有することは難しそうですが、今回、政府が“国産巡航ミサイル”導入に向けた費用を18年度予算に盛り込んだのは、画期的なことだと言えます」(前出の黒鉦氏)

 巡航ミサイルとは、簡単に言えば“爆弾を積んだ航空機”であり、長距離を飛びターゲットを破壊する。高い命中精度を誇るのが特徴で、いわゆる“ピンポイント攻撃”が可能だ。「北朝鮮と米国が開戦した場合、米軍は護衛艦や原潜から大量の巡航ミサイルを発射します。これで一気に、北朝鮮の主要な軍事施設を制圧して戦闘不能に追い込むわけです」(前同)

 自衛隊が導入しようとしているのは、射程500キロと1000キロの2種類の巡航ミサイルで、政府は「弾道ミサイル防衛を担う日米のイージス艦の防衛用」「離島上陸部隊の攻撃用」と説明している。「巡航ミサイルを保有すれば、敵のミサイルや火砲の射程圏外からの攻撃が可能となりますが、最大のメリットは“敵基地先制攻撃”が実現することでしょう。北朝鮮が核弾道ミサイルを日本に向けて発射するという確かな情報を得た場合、発射後にこれをイージスシステム等で迎撃するよりも、敵ミサイル基地を巡航ミサイルで破壊してしまったほうが確実です。この場合の先制攻撃は“防御のための攻撃”なので、専守防衛の範囲内だと考えられますが、議論が分かれるでしょう」(前出の防衛省担当記者)

 巡航ミサイルが搭載されるのは、導入が始まった「F-35A」ステルス戦闘機だ。「現在の航空戦は、先にレーダーで敵を捕捉したほうが勝利するので、レーダーに捕捉されにくいステルス戦闘機を持っていることは、大きなアドバンテージになります」(前同)

 日本は合計42機を導入予定だが、空自では同時に米軍の高高度無人偵察機「グローバルホーク」を3機導入する方針だ。配備は21年度以降になるが、実現すれば、「北朝鮮のミサイル発射基地を24時間態勢で監視することが可能になる」(同)という。

■中国などの脅威に備え、水陸機動団新設

 また、18年3月には陸上自衛隊に「水陸機動団」が新設される。「離島防衛のエキスパートだった西部方面普通科連隊(相浦駐屯地=長崎)を発展させたもので、いわば“日本版海兵隊”です。同時に陸自は、統合機動防衛力整備の一環として1000人規模の即応機動連隊を各地に新設します。同連隊は有事に迅速な対応が可能で、高い戦闘力を発揮すると期待されています」(軍事フォトジャーナリストの菊池雅之氏)

 水陸機動団は、占領された島に上陸し、奪還作戦を行う精鋭。現在、北朝鮮ばかり注目されるが、日本領である尖閣諸島を狙う中国の脅威に備えることも、怠ってはならないのだ。「北朝鮮は言うまでもなく、軍拡路線をひた走る中国、反日色の強い韓国など、日本を取り巻く安全保障環境は良好なものではない。“北朝鮮は自衛隊の生みの親であり育ての親”と、よく言われます。朝鮮戦争を機に自衛隊が誕生し、今また北朝鮮の脅威が差し迫り、自衛隊が変わろうとしているからです」(前出の防衛省関係者)

 自衛隊の“本当の進化”が始まりそうだ。

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