■いい医者と専門病院へ

 このような治療法においては知識と技術が必要となるだけに、医師選びが重要であることは言うまでもない。いい医者と治療を選ぶためには患者自身も、がんの勉強をすることが大切だ。それなりの知識がなければ、選ぶ基準も定まらない。そのうえで、選んだ後でも不信感を抱いたら担当医の“チェンジ”に踏み切ってもいいそうだ。

 さらに、厚労省が定めた地域のがん専門病院『がん診療連携拠点病院』は全国に434ある。がん治療の拠点になるこの病院には、がん患者や患者家族をサポートする『がん相談支援センター』の設置が義務づけられており、気軽に相談することができる。

『国立がん研究センター・中央病院』(東京都中央区)の相談支援センターに所属する宮田佳代子さん(社会福祉士)は次のように話す。「がんと診断された、あるいは、がんの疑いがあるという方はさまざまな不安を抱えます。治療中の仕事はどうすればいいのか、家族が、がんと診断されて気持ちが落ち込んでいる……などです。“こんなことを聞くのも……”などと遠慮せず、ぜひ相談支援センターを利用してください」

●新薬や先進医療の質問も多い

 同センターは、がん患者や患者家族だけでなく、一般の人も利用できて、相談料は無料。医者に相談できないことも、聞きやすい。たとえば、その一つが新薬への質問。「これはよくある質問です。治験薬を使っている病院や医師の情報をお知らせすると同時に、危険性もお伝えします。こうした“新薬”は効果や副作用がまだ、しっかり分かってない場合が多いですからね」(前同)

 同様に、先進医療への関心も高いと言うが、「手術、抗がん剤、放射線が標準治療と呼ばれているせいで、先進医療は、その上を行くように思われている方がいるのですが、実は先進医療はまだ“研究段階”でもあるのです。その意味で、先進医療が標準治療に勝っているというわけではありません。もちろん、どの病院でやっているかはお教えしています」(同)

 治療費が心配な人には、「患者さんの経済状態に対応したプランを考えてあげるのも、相談支援センターの仕事です」(同)と言うから、頼もしい限り。

 そんな、がん専門の「がん診療連携拠点病院」は、地域によって密集具合が異なる。ホームページで簡単に調べられるので、自分の家から、どこが近いのか、事前に確認してほしい。

「最近、がん発症率には地域差があることが分かりました。また、精子に抗がん剤を運ばせて、がん細胞を死滅させる実験に成功した例や、遺伝子情報を利用したがん治療の研究も進むなど日進月歩の世界だからこそ、幅広く情報を得てください」(医療ジャーナリスト)

 国立がん研究センターの調べでは、日本人男性が生涯で、がんに罹患する確率は62%で、死亡する確率は25%(4人に1人)。いざという時のために、“備え”をぜひ確認してほしい。

本日の新着記事を読む

  1. 1
  2. 2