病やケガなどで病院に入院しているときは、それまで元気だった人でも、元の生活に戻れるかどうか不安でいっぱいになるものだ。そんなときに気にかけてくれて、わざわざお見舞いに来てくれる人の存在はどんなにありがたく、心強く感じられるか分からない。今回は退院して元の生活に戻れたときにきちんとお礼できるよう、快気祝いの一般的なマナーを解説する。
■これだけは知っておきたい!「快気祝い」の常識
●「快気祝い」とは
「快気祝い」とは、病気や怪我が「完治して」退院したときに、お見舞いに来てくれた人に対し、お礼と報告を兼ねて品物を贈ること、もしくは品物そのものを言う。「全快祝い」「お見舞い返し」と同じ意味で使われることが多い。
●「快気内祝い」との違い
快気祝いと紛らわしいものに、「快気内祝い」がある。間違えないように注意しよう。「快気内祝い」とは病気や怪我が完治したわけではなく、退院後に通院や自宅療養を行う場合に用いられる。「退院祝い」とも呼ぶ。
●快気祝いを贈る時期/タイミング
快気祝いを贈る時期に決まりがあるわけではないが、退院してから1週間から10日、遅くとも1か月のタイミングを目安に手配するのが一般的だ。大安の日を選んで贈る人もいるが、六曜(先勝・友引・先負・仏滅・大安・赤口)はあまり関係ないので気にしなくてよい。自宅に戻って少し落ち着いたら、忘れないうちに準備しよう。
■快気祝いの金額相場と現金の渡し方
快気祝いを用意する際の予算金額の相場は、いただいたお見舞いの1/2~1/3程度が常識的だ。これは、お見舞いが現金であっても、品物であっても変わらない。
●現金の渡し方
現金にするときは祝儀袋に入れて渡そう。お祝い事であるため、のしと水引がついた袋を使うのが通例である。水引はほどけやすい蝶結びではなく、“二度と繰り返さない”という思いを込めた紅白の「結び切り」を使う。表書きの文字は「快気祝」「全快祝」「御礼」などが一般的だ。
以前は、金額が露骨に分かる現金や商品券を贈るのは失礼とされていたが、現在では実用的だということで贈る人が増えてきている。
■これが一般的!? 快気祝いの定番品
●定番品とその理由
かつては快気祝いと言えば赤飯や紅白餅などを贈るのがお決まりだった。しかし最近では「消えもの」と呼ばれ、食べたり使ったりすれば消えてなくなる消耗品を贈るのが定番である。二度と繰り返さないようにという願いを込めるからだ。
【例】
□溶けてなくなるもの
砂糖・コーヒー・チョコレートなど
□水に流せるもの
石鹸・洗剤・入浴剤など
□食べてなくなるもの
油・お菓子など
□「今、治りました」の語呂合わせ
今治タオル
会社関係の人などからまとめてお見舞いをもらったときは、個別に返さなくてもよい。その場合は、みんなで分けられる個別包装品の詰め合わせギフトがベストだろう。その場で食べられるジュースやクッキーなどの飲食物がおススメだ。
●これは贈っちゃダメ! NGな快気祝い
贈ってはいけない快気祝いの品としては、病を連想させるようなもの、後に残るものが挙げられる。
□寝具
シーツやパジャマなどは病、入院を連想させる。
□鉢植え
花束を贈るのはいいが、根づいて後に残ってしまう鉢植え類は控えよう。
□インテリア
長く利用できるものは避けるのが無難だ。記念品と称した置物なども選ばないほうがよい。
■快気祝いと一緒に贈る手紙の書き方マナーと文例
快気祝いの品物に添える手紙やメッセージの内容に、これといった決まりごとはない。しかし、退院の報告も兼ねているため、お見舞いへのお礼のほかに、回復と退院の報告、快気祝いを贈る内容を入れるといいだろう。
●手紙/メッセージの例文
参考になるように、そのまま使える文例をいくつか紹介しておこう。
□カジュアル系
家族や親しい友人宛てなら、素直な気持ちを自由に書けばよい。
○○へ
- この間はお見舞いに来てくれてありがとう!
- 入院中は不安だったけど、○○の顔を見て気持ちが楽になったよ。
- おかげで元気になって○月○日に退院できたから、
- ありがとうの印にお礼を贈るね。
- 早く会えるのを楽しみにしてるよ
○○より
□ノーマル系
近しい人でもきちんとしたいときや、仕事関係の人でもプライベート感を出したいときなどに使うことができる。
○○さん
- 入院中はお見舞いありがとうございました。
- ご心配をおかけしましたが、
- おかげさまで全快し、○月○日に退院いたしました。
- ささやかではありますが、お礼をお贈りします。
- 復帰予定は○月○日となっています。
- 今後とも何卒よろしくお願いいたします。
○○より
□フォーマル系
仕事関係の人や年長者などには、失礼のないよう常識的なマナーを守った正式な書き方をしたい。
- 謹啓
- (時候のあいさつ)
- 先日は、お忙しい中をお見舞いにお越しいただいた上、
- 過分なお心遣いまで賜り厚く御礼申し上げます。
- お陰様をもちまして順調に回復し、○月○日に退院致しました。
- これもひとえに○○様の温かいお言葉と励ましのお陰と存じます。
- お心遣いの御礼として、心ばかりの品を贈らせていただきますので、
- ご笑納いただければ幸甚に存じます。
- まずは略儀ながら、書中をもってご挨拶申し上げます。
- (結びのあいさつ)
- 謹白
- ○○年○○月○○日
- ○○○○
- ○○○○様
●これは使っちゃダメ! 快気祝いのNGワード
快気祝いのお礼状では使用を控えたいNGワードがある。自分なりに考えて文章を書くときは、以下の点に気をつけよう。
□重ね言葉
「ますます」「重ね重ね」「くれぐれ」「再び「次々」「返す返す」「いろいろ」「いよいよ」などは、快気祝いでは忌み言葉にあたる。
□ネガティブな表現
病への愚痴や不満、将来への弱音などは避けて、前向きでポジティブな表現を使おう。相手を心配させてしまうため、死ぬ、枯れる、苦しむといった言葉も使わないほうがよい。
■まとめ
自分がつらくて気弱になっているときに心配してくれた人、励ましてくれた人、優しく寄り添ってくれた人は本当に大切にしたい。相手が同じような状況になったときに、今度は自分が支えになるのはもちろんのこと、まずは感謝の気持ちを込めて、しっかりお見舞いのお礼と退院の報告をしよう。