■「おしゃぶり」のデメリット

 さまざまなメリットがあり、育児における便利グッズともいえるおしゃぶりだが、デメリットについても押さえておきたい。

●歯並びが悪くなる可能性

 おしゃぶりを与えることで懸念されるのが、歯並びへの影響である。赤ちゃんがおしゃぶりを噛むようになってくると、歯に圧力がかかり、上の歯と下の歯に隙間が生じて、出っ歯になってしまう可能性がある。また、噛み合わせが悪くなる可能性もあり、注意が必要。そのため、おしゃぶりの長時間使用は控え、遅くとも1歳頃までには卒業しておくのがベターである。

●赤ちゃんの情緒・言語・コミュニケーション能力の発達に影響する可能性

 おしゃぶりを与えると確かに赤ちゃんは泣き止んでくれる。しかしおしゃぶりを与えすぎることは、親子のスキンシップの機会、赤ちゃんからの意思表示や言葉を発する機会を中断させている側面があり、その結果、赤ちゃんの情緒や言語、コミュニケーション能力の発達を妨げてしまうリスクが懸念される。おしゃぶりの「頼り過ぎ」にならないよう十分に注意したい。

●中耳炎発症の可能性

 1歳を過ぎてからもおしゃぶりを与えられていると、赤ちゃんの喉や鼻に圧力が加わって耳に細菌が流れやすくなり、中耳炎の発症リスクが高まるといわれている。また、おしゃぶりを制限することによって中耳炎発症率が下がるという報告もある。とりわけ、赤ちゃんの体調不良時のおしゃぶり使用には注意したい。

●おしゃぶり依存の可能性

 上記のおしゃぶりのデメリットを避けるためにも、赤ちゃんがおしゃぶり依存症にならないよう注意しなければならない。おしゃぶりへの執着や依存が高まると、出っ歯や中耳炎になる怖れ、発達への影響はもちろん、幼児になってからもおしゃぶりを手放せないということにもなりかねず、おしゃぶり卒業が困難になってくる。おしゃぶりはハイハイを始めるころに卒業するのが望ましい。

■2006年に起きた「おしゃぶり訴訟」とは!?

 2006年、おしゃぶりを3歳まで使い続けたことによって歯列やあごの変形が生じるなど深刻な障害が残ったとして、子どもとその母親が育児用品メーカーに損害賠償請求を求める訴訟を起こした。2008年に和解成立し、和解条項にはメーカー側の条件として「おしゃぶりが子どもの歯やあごなどに与える影響について情報収集に努め、製品の改良や適切な使用表示の実現に向けて、努力を継続する」と記載された。この件がきっかけとなり、育児用品メーカーは、おしゃぶり製品のパッケージやホームページにおしゃぶり使用上の注意事項を明記するようになり、また、平成19年度以降の母子手帳には「おしゃぶりの長期間の使用によるかみ合わせへの影響について」の記述が追加された。

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