■複数の微生物によって作られる発酵食品

 発酵食品の中には、一種類ではなく複数の微生物の働きによって製造される発酵食品も少なくない。

【味噌】……麹菌+乳酸菌+酵母菌

 日本の伝統的調味料の一つである味噌は、蒸して砕いた大豆に、食塩を加え麹菌で分解して作られるのだが、その過程で大豆は硝酸還元菌→麹菌→乳酸菌→酵母菌の順に発酵していく。

 味噌は使用される原料によって大きく4種類に分けられ、米麹が使われる「米味噌」、麦麹が使われる「麦味噌」、豆と食塩と水だけで作られる「豆味噌」、これらの味噌を混合した「調合味噌」がある。さらに、味噌の色には赤・淡・白があり、風味も甘口・辛口とがあり、地域によって製造されている味噌の原料や色や味は異なってくる。全国的に最も広く普及しているのは米味噌で、長野県の「信州味噌」、宮城県の「仙台味噌」、京都府の「西京味噌」などが有名である。

【しょうゆ】……麹菌+酵母菌+乳酸菌

 味噌と同じく日本の伝統的な調味料であるしょうゆは、大豆と小麦を混ぜて麹菌を繁殖させ、さらに酵母菌と乳酸菌を発酵させて作られる。しょうゆには、「濃い口しょうゆ」「薄口しょうゆ」「たまりしょうゆ」「甘露しょうゆ」「白しょうゆ」といった種類がある。

【キムチ】……乳酸菌+酢酸菌

 白菜などの野菜類、魚介塩辛、塩、唐辛子などで作られた漬け物のキムチは、元々は朝鮮半島で保存食として普及し、やがて日本でも親しまれるようになった発酵食品であり、乳酸菌がふんだんに含まれている。キムチに含まれている乳酸菌は「植物性乳酸菌」と呼ばれ、これは野菜の中にある糖類を分解させ、乳酸や酢酸を作り出す働きを持っている。ただし、日本で製造されるキムチの中には、日本人の好みに合わせるため白菜の浅漬けに調味料を合わせただけの商品もあり、こういった商品では乳酸菌の効果は期待できないとされている。

■その他にも発酵食品は多種多様に存在している

 味噌やしょうゆといった伝統的調味料の存在からも分かるように、日本は発酵食品の文化が深く広く浸透している国である。全国各地でさまざまな発酵食品の研究と開発が進められてきたほか、世界各地の発酵食品の文化も取り入れられている。

 ここまでに紹介したものの他にも、「鰹節」「ウスターソース」「コチュジャン」「ナンプラー」「アンチョビ」「くさや」「ザーサイ」「メンマ」「タバスコ」「バニラ」「紅茶」「ウーロン茶」「プーアル茶」「甘酒」などが発酵食品として挙げられ、スーパーやデパ地下などでは多種多様な発酵食品が並んでいる。

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