●高齢者は死ぬまで働けというのか!?

 冒頭の〈開始年齢を75歳以降にまで~〉ウンヌンというニュースは、そういった事情を受けて、受給開始を遅らせようというもの。政治評論家の安積明子氏は次のように話す。「年金の話になると、いつも思うのは“正直者が馬鹿を見るような制度ではいけない”ということです。ある人が政府の提言通りに年金受給開始年齢を75歳にしたとして、その年齢まで無理して働いて、やっと年金をもらう頃には健康を害していて、まもなく亡くなったとしたら、あまりに悲しい話です」

 “1億総活躍社会”と言えば聞こえはいいが、要は「年金受給開始年齢を引き上げるので、高齢者は死ぬまで働け」と言っているのと同じではないのか。そうした悲劇を防ぐためには、「政府の提言に踊らされず、各自が自分の老後を真摯に思い描いておく必要がある」と安積氏は言う。

 また、経済アナリストの森永卓郎氏は「まもなく閣議決定される高齢社会対策大綱では、おそらく80歳まで年金受給開始年齢を繰り下げることが可能になるはずです」と予想する。「60~80歳の真ん中の70歳を年金受給開始年齢にすると、年金給付額の4割をカットできるので、財源の問題は当面なくなるという論法です。政府の考えることは怖いですよ」(森永氏)

 年金積立金の運用についても、「150兆円という数字は年金給付総額約50兆円の数年分の残高しかないので、多少の運用をしても年金給付水準にほとんど影響はない。今の株式運用は非常に中途半端なので、むしろ全額を国債で運用してリスクを避けたほうがいい。さもなくば米国の私的ファンドのようなハゲタカファンドに投資してえげつなく儲けるか、どちらかにしたほうがいいと思います」と森永氏が語るように、決して安泰ではないのだ。

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