■豆まき

 節分の日に行われる恒例行事といえば「豆まき」。「鬼は外! 福は内!」と言いながら家の中に豆をまき、年の数か、年よりひとつ多い数の豆を食べる。

 季節の変わり目には鬼がやってきて病気や災害を引き起こすといわれていたため、豆をまいて鬼払いをすることが目的とされている。最近では自宅で豆まきをする家庭は減少傾向にあるものの、幼稚園や保育園、介護施設などでは今も盛んに行われている。

 豆まきは、7世紀ごろ中国から伝わった鬼払いの儀式「追儺」(ついな)が由来とされている。追儺は「おにやらい」とも呼ばれ、鬼を演じる役人を、杖などを持った殿上人たちが追いかけて退散させる儀式であり、日本では天武天皇時代の宮中ではじめて行われたとされている。現代の「鬼ごっこ」とは逆で、鬼が追われる立場であるのが興味深い。大豆をまくようになったのは室町時代に入ってからであり、これが「豆まき」として庶民の間にも定着していった。

 近年、「ワタナベさんは豆まきをしなくてもいい」という説が広まっているが、これは昔、丹波の大江山に住んでいたという伝説の鬼「酒呑童子」(しゅてんどうじ)を、源頼光の家臣である、渡辺綱を筆頭とする頼光四天王が討伐した、という話が由来。鬼が怖がって寄りつかないため、豆まきをする必要がないのだという。

 また、節分の日は豆まきのほかに、柊の小枝に焼いた鰯(いわし)の頭を刺した「柊鰯」(ひいらぎいわし)を魔除けとして戸口に飾る風習があり、こちらも日本各地で広く行われている。

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5