●親と子は、違う人間である

 まず念頭に置いておきたいのが、親と子どもは別人、同じ人間ではないということだ。顔や声や体質がどんなに似通っていたとしても、親と子は、分身でもなければコピーでもない。子どもにとって親は紛れもなく「他者」だし、親にとっても子どもは「他者」。それぞれ異なる人格を持っているのだから、価値観も異なって当たり前だし、同じ状況でも同じように考えるとは限らない。しつけをするときに限ったことではないが、親は子どもと接するとき、「子ども=自分自身」ではないことを踏まえておきたい。

●命令、強制、否定口調は子どものやる気を失わせる

 親から見て「やるべきこと」「やってほしいこと」を子どもがやっていないとき、親はつい「~しなさい!」と言ってしまいがちだ。また、「やめてほしいこと」を子どもがやっているときに「~しないで!」という言葉が、つい口を出てしまう。そして、子どもがすんなり応じないと、親はますますイラっとしてしまう。

 しかし命令口調で言われたり、頭ごなしに注意されたりするのでは、子どもも気分を悪くする。強制や否定をされることによって、ますますやる気を失くしたり、反発を招いたりする。また、応じたとしても「怒られるからやる」「うるさいからやめておく」のでは、子どもの自主性が損なわれかねない。

 子どもに「やるべきこと」「やってほしいこと」を促すとき、「宿題しなさい!」ではなく、まずは「ゆっくりご飯を食べたり遊んだりできるように、先に宿題しようね」と声をかけてみる。また、子どもに「やめてほしいこと」を伝えるときは、「電車で騒がないで!」と否定するのではなく、「公共の場所だから、静かな声で話してね」と声をかけてみる。そしてその際、「なぜ」そうする必要があるのか、子どもが理解できるよう説明することで、子どもも納得できる。

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