“ひふみん”でブレイク、加藤一二三九段「ほっこりマイペース」の魅力

 78歳といえば世間じゃ後期高齢者、だが、この人は神武以来の大人気。ゴーイングマイウェイもここまでいけば愛される、その魅力とは!?

■NHK紅白歌合戦やCMにも出演

 2017年、実に150本近くのテレビ番組に出演し、『NHK紅白歌合戦』にも審査員として登場。さらに、現在4社ものCMに出演中と大ブレイク中なのが、“ひふみん”こと将棋の加藤一二三九段(78)だ。「16年末、14歳2か月でプロ入りした藤井聡太四段(現・六段)のデビュー戦の相手としてお茶の間の話題になり、17年の6月に引退するや、“かわいいおじいちゃん”として浸透。自由奔放なトークと、笑われても、まったく気にしないマイペースさで、ゆるキャラ的な人気を得ました」(テレビ誌記者)

 今年1月25日には、『日本PR大賞パーソン・オブ・ザ・イヤー』を受賞。喜びのあまり、13分もスピーチを続け、関係者からストップがかかったが、「前歯の抜けた愛嬌たっぷりの笑顔に、会場は温かな笑いに包まれました」(スポーツ紙記者)

 だが、将棋ファンにしてみたら、あの加藤九段が、こんな形で脚光を浴びるとは予想もしなかっただろう。

■将棋界の生けるレジェンド

「ひふみん……いや加藤九段は1954年、14歳7か月で史上最年少・史上初の中学生棋士としてプロ入りするや、破竹の進撃。名人戦の予選にあたる順位戦でデビューから4年連続で昇級を果たして、18歳でA級八段となり、“神武以来の天才”と呼ばれた、将棋界の生けるレジェンドなんですよ」(将棋ライター)

 最年少プロ入りの記録は前出の藤井六段の登場まで62年間破られることはなく、4年でA級八段という記録も、永世七冠を達成し、国民栄誉賞を受賞することになった羽生善治二冠でさえ叶わなかった金字塔。積み重ねた通算1318勝は、大山康晴十五世名人、羽生二冠に次ぐ歴代3位という大偉人なのだ。

 だが、同時に、奇行や異端児伝説の多さも棋界一。「将棋盤や駒が割れそうなくらい“バシン!”と大きな駒音を立てて打つのが加藤先生の特徴。勢い余って、相手の駒を吹き飛ばしたことも一度や二度ではありません」(専門誌記者)

 そのいでたちも独特で、「対局時は、ネクタイを長く結ぶのが常。その先端はベルトより20センチも下にあり、正座すると床につくほどです」(前同)

 さらに、対局中に相手の背後に立ち、反対側から盤面を眺めて形勢を測る、相手にとっては迷惑このうえなさそうな“ひふみんアイ”という必殺技(?)も。「その際、長いネクタイが相手の頭にペチペチ当たってもお構いなしという自由闊達ぶりです」(同)

 食へのこだわりも独特だ。「30年以上、対局の日は昼夜ともうなぎが定番でした。“対局中に食事のことで迷いたくないから”とのことです」(観戦記者)

 甘いものが大好きで、対局中に板チョコをバリバリ、カルピスをゴクゴク。板チョコは最高で10枚を平らげたこともあるという。「板チョコは明治の商品をカートンで購入し、手持ちがなくなると対局中でも買いに行くほどです」(同前)

 早口で興奮気味に話す、テレビなどでの解説も将棋ファンにはおなじみだ。「いい手が出ると“ひゃあ!”と驚く素直なリアクションが代表的。手のすごさが視聴者に分かりやすく伝わるため“ひゃあ!”とともに名局として語り継がれるようになった対局も数知れません」(専門誌記者)

■ひふみんの存在は老後へのヒントに

 本誌の詰将棋を監修する佐藤義則八段(68)は、奨励会時代に、まだ若き加藤九段の対局の記録係を務めた際の思い出を話してくれた。「羽生二冠でも藤井五段でも、若いときはどんどん指し手が進むものですが、加藤九段は当時から、一手に何時間もかける長考家。将棋に向き合う姿勢は真剣そのもので、好んで色紙に書く“直感精読”を若い頃から実践されていたと思うと、改めて感服させられます」

 時間をいくらかけようと「将棋に勝つ」ことだけを追求する迷いのなさのおかげで、人目や金、名誉といった世間の物差しも気にしないで済んだのだ。「中学時代から将棋しかやってこなかったために浮世離れしており、一般的な価値観と、加藤九段の感覚に絶妙なズレがある。それが面白味となって人気を得ましたが、何より、そこに計算や嘘がないため、そのズレごとも人々に愛されてしまうんでしょう」(佐藤八段)

 マイペースさが、ただの身勝手ではなく、好きなことに全身全霊を捧げた人生の証であることが分かるがゆえに、本人の魅力にもなる。「我々も日頃から好きなことに打ち込み、“それだけで幸せ”という精神状態でいれば、たとえば定年退職後に会社の肩書きや人間関係がなくなっても気にせず、楽しく生きられる“ひふみん力”を身につけられるかもしれません」(心理学者)

 ひふみんの存在は、豊かな老後へのヒントになるのかもしれない。

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