目からウロコの「正しい歯磨き」その方法とは?の画像
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 マウスケアは健康の原点。きっちり手入れしたいところだが、これまでの常識が間違いだったなんてことも。さあ、ベストの方法を身につけよ!

 私事ではあるが、50代後半の本誌記者の歯は、ほぼ「壊滅状態」。現在、残っている歯は11本で、右下の犬歯がグラグラしているので早晩10本になるはずだ。部分入れ歯でどうにかしのいでいるものの、煎餅どころか、肉やサラダもろくに噛めない。また、見た目も部分入れ歯がやけに白くて見苦しく、話しているときはなるべく口を開けないようにしているぐらいだ。歯みがきは人並みにしていたのに、なぜ、こんなことになってしまったのか?

「簡単に言えば、歯みがきの仕方が悪かったんですよ」 こう説明するのは『パトリア歯科医院』の嶋田泰次郎院長だ。「正しい歯みがきこそが歯を守る唯一の方法」と訴え、患者に「正しい歯みがき」の仕方を指導しているという。「きちんと正しい歯みがきをしていれば、80歳、90歳になっても、健康で丈夫な歯を保つことができます」

 正しい歯みがきさえしていれば、厚生労働省が提唱する、80歳で20本、いわゆる「8020」も十分に可能だという。「歯は虫歯になって抜けるわけではありません。原因は歯茎、つまり歯周病で抜けてしまうのです。だから、歯周病を防ぐための歯みがきをすることが大事なんです」(前同)というのだが……。

■「歯周ポケット」に要注意

 では、どんな歯のみがき方をすればいいのか? まずは、歯が抜ける理由について簡単に説明しよう。口の中には雑菌が300種類ぐらい潜んでいるといわれている。この中には、虫歯の原因菌とされるミュータンス菌や、歯周病の原因となるポルフィロモナス・ジンジバリス菌などの「悪玉菌」も含まれる。

 虫歯菌は歯の表面に張りついて歯を溶かすが、歯周病菌は歯ではなく歯茎歯と歯肉のすき間の溝(歯肉溝)に潜り込んで、歯肉や歯の根元にある骨(歯槽骨)を蝕んでいくのだ。歯肉溝とは、「歯周ポケット」ともいわれる。歯科医院で「ちょっとポケットを測りますネ」とチクチクされる、そのポケットのことだ。食物のカスが溜まりやすい歯肉溝は、歯周病菌の格好の温床になる。食べカス(プラーク=歯垢)は、菌が繁殖すると、歯肉部の炎症を引き起こし、通常、0.5~2ミリぐらいの浅い歯肉溝を深くしてしまうのだという。

 都内の歯科医院に勤める歯科衛生士の宮崎茜さんも、毎日のようにポケット検査をしているという。「プラークが溜まり、2~3ミリぐらいに広がると、根元が少し赤くなって炎症が起こるんです」

 ここまでなら、さして痛みもなく、せいぜい「冷たい水がしみる」程度。ところが、これ以上になると、「歯が痛くて、よく噛めない」状態になり、深さが6 ~7ミリになると、歯がグラグラしてくるため、抜歯も視野に入ってくるという。「“痛くて噛めない”状態で来院される患者さんが多いんですが、せめて“水がしみる”3~4ミリの段階で来院してもらえば、どうにかできるのにと、いつも思います」(前同)

■歯周病の元凶はプラーク

 記者は冷たいものを飲んで歯茎がしみたり、歯茎が腫れて痛かったりしたとき、「放置と痛み止め」でごまかしていたのだが、こうした歯周病の予兆があったときはなるべく早く歯科医院を訪ねたほうがいいという。歯周病が進行すればするほど治療に時間がかかり、治療の痛みも増えるし、場合によっては抜歯せざるをえなくなるからだ。

 歯肉溝のプラークに棲みついた歯周病菌が歯をグラグラにさせるのは、歯肉溝の下にあるセメント質や歯根膜へと侵蝕して、最終的に歯を支える骨(歯槽骨)を壊していくからだ。「つまり、歯周病の元凶は歯肉溝に溜まったプラークなんです。これを歯みがきでしっかり取り除けば、歯周病は防げるということになります」(前出の嶋田院長) 歯肉溝のプラークを取り除くことが、健康な歯を保つための歯みがき法なのだ。

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