■歯の裏側や歯間も「三種の神器」で

 一本一本、溝のゴミをかき出したら、次は歯の裏側も忘れずにみがく。「私は患者さんに“歯みがきをするときには鏡を見ながら歯ブラシを使う”ことを勧めています。ひげ剃りをするときに鏡を見ながらするでしょ? そのほうが剃り残しなく確実で、時間も短くてすみますから。歯みがきも同じです」(同)

 だが、これで終わりではない。まだ歯と歯の間の隙間が残っている。ここもしっかり掃除をしないと、歯周病菌が繁殖する。「歯と歯の間は、歯ブラシでは太すぎて入れづらいんです。そこで必要になるのが、歯間ブラシです」(同)

 歯間ブラシは細い針金の先にブラシがついた形状をしている。このブラシ部分を歯と歯の間に入れて、そこの隙間に溜まったプラークをかき出すのだ。

 そして、この歯間ブラシが終わったら、もう一つ。歯と歯が接触する部分も掃除しよう。実は、ここも虫歯菌の巣窟。ここに繁殖した歯周病菌が歯茎に入り込んで、歯周病を招くのだ。「この部分には、糸状のデンタルフロスでプラークを取り除くのがよいでしょう。歯周病は、この“三種の神器”で防げます」(同)

 こう話す嶋田院長は、記者も羨ましくなるほど白くて健康な歯をしている。よほど時間をかけて歯みがきをしているのだろうか。「いえ、歯ブラシ、歯間ブラシ、デンタルフロスで費やす時間はせいぜい2~3分程度です。これを毎食後にしているのですが、それでも一日6~9分程度です。最初は少し大変に感じるかもしれませんが、先に述べたように鏡を見てやると早く効率的にできますし、習慣化すればなんでもありません。これで歯周病の心配もなく、一生、自分の歯で食べられると考えれば苦にならないはずです」(同)

■定期的に歯医者へ

 しかし、日本人の7~8割がかかっているといわれる歯周病だけに、歯みがきだけでは、なかなか防ぎきれないのだという。「どんなに正しい歯みがきを心がけても100%のプラークを除去するのは難しいんですね。このプラークは2~3日で歯石となりますから、こうなってしまうと、歯みがきで除去することが、いよいよできなくなります。そのためにも、3~4か月に1回のペースで、定期的に歯科医院に行くことをお勧めします」(同)

 歯周病が進行して歯が抜けると、食事の楽しみが減るだけでなく、さまざまな病気のきっかけにもなる。歯周病菌が血液に取り込まれて心臓などの臓器にダメージを与え、免疫力も弱まる。さらに、歯が抜けた人は認知症の発症率も高くなることが分かっている。

 ちなみに、中高年の悩みのタネの口臭も、歯肉溝に溜まったカスであることが多い。「言ってみれば、口の中に残飯があるようなものです。しっかりと歯みがきをすれば、口臭も解消できます」

 僕はもう手遅れなんでしょうねと、しょげる記者に、嶋田院長は、「いえいえ。残った歯をしっかり守ることが大切です」と、まずは歯間ブラシとデンタルフロスをそろえるようアドバイスしてくれた。

 記者の場合は、すでに「8020」は不可能になってしまったが、せめて10本は死守したいところ。皆さんも三種の神器で、歯周病から歯を守る正しい歯みがきをして、しっかり歯を守ってください!

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