●大黒天(だいこくてん)

 大黒天は元々、財宝と食物を司るインドのマハーカーラ神をルーツとした神様である。マハーカーラは大いなる暗黒を意味し、ヒンドゥー教のシヴァ神の化身や別名とされている。恐ろしい憤怒顔と真っ黒な姿が特徴的で、破壊や殺戮を行う。

 密教を日本に伝えた最澄は、大黒天を比叡山延暦寺の台所の守護神としてまつった。家を支える物や人のことを指す「大黒柱」は大黒天が語源だが、当時は台所の神として知られていたため、台所と座敷の間に立てられた大柱を大黒柱と呼ぶようになったといわれている。

 大黒天が現在のような姿になり、福の神として信仰されるようになったのは、「大黒」と「大国」がともにダイコクという同音であることから、大国主神(おおくにぬしのかみ)と同一視されるようになってからである。大国主神は因幡の白兎神話や、国作り神話、国譲り神話など多くの物語に登場する日本神話の中心的な神様である。

 大黒天といえば、大きな袋を背負って打ち出の小槌を手に米俵の上に立っている姿がおなじみである。トレードマークの福袋は、因幡の白兎伝説のときに大国主神が持っていた大袋が由来とされている。打ち出の小槌が福を招き富をもたらす宝物を、米俵が台所の神としての性格や、食物の豊かな実りを表している。

*大黒天のご利益

出世開運 商売繁盛 子孫繁栄など

*大黒天にゆかりのある有名寺社

東京都 神田明神(かんだみょうじん)

江戸時代、「江戸総鎮守」として江戸のすべてを守護。一之宮に大己貴命(おおなむちのみこと)の名を持つ大黒天が、二之宮に少彦名命(すくなひこなのみこと)の名を持つ恵比寿が、三ノ宮に平将門命(たいらのまさかどのみこと)がまつられている。江戸三大祭および日本三大祭に数えられる『神田祭』は全国的に有名。

●毘沙門天(びしゃもんてん)

 毘沙門天は、インド神話のクベーラ神をルーツにする神様である。クベーラ神は、ヒンドゥー教では財宝や福徳を司る神として、鬼夜叉たちを率いて北方を守護する。仏教に取り入れられると、四天王・十二天に数えられる神様となった。四天王は仏教を守護するために、仏の住む世界を支える須弥山(しゅみせん)の四方に住んでいる四柱(※“柱”は神様の単位)のこと、十二天は密教において世界を守護するといわれる十二柱のことである。毘沙門天という名前は、中国に伝わる過程でクベーラが音写されて毘沙門天、漢訳されて多聞天(たもんてん)と呼ばれるようになった。

 毘沙門天にはさまざまな姿がある。七福神として一般的なのは、憤怒顔で甲冑を着ており、右手に宝棒、左手に宝塔を持ち、2匹の鬼夜叉を踏みつけている武神の姿である。その勇猛さのため、戦国武将からの信仰もあつく、楠木正成や上杉謙信などは自らを毘沙門天の申し子、生まれ変わりなどと称していた。

*毘沙門天のご利益

武道成就 立身出世 厄除けなど

*毘沙門天にゆかりのある有名寺社

京都府 鞍馬寺(くらまでら)

木造の毘沙門天三尊像は国宝。重要文化財の聖観音立像、兜跋毘沙門天立像もあり、源義経が牛若丸と呼ばれた幼年期に天狗と一緒に修行したという伝説で有名。

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