■お屠蘇の作法

 古くから日本で続いてきた風習であるお屠蘇には、作法も存在する。とはいえ、現代では「略式」が一般的である。

 お屠蘇を注ぐ器は、かつて「屠蘇器」(とそき)が使われていた。屠蘇器とは、銚子(ちょうし)と盃(さかずき)と盃台(さかずきだい)、これらを載せる盆からなっている道具のことであり、漆器製やガラス製のものがある。

 現代でこの屠蘇器を用意している家庭は少なく、必ず屠蘇器でなければならないという必然性も薄れているので、屠蘇器がなければほかの酒器を使っても差し支えない。

●やりかた

(1)まず、若水(元日早朝に汲まれた水)を使い、身を清める。
(2)神棚、仏壇を拝む。
(3)新年のあいさつを交わす。
(4)お屠蘇を飲むときは、家族全員「東の方角」を向き、飲む人の右手側から盃に注ぐ。
(5)「一人これ飲めば一家苦しみなく、一家これ飲めば一里病なし」と唱える。
(6)年少者から年長者へと盃を順番に回していく。なぜ年少者からなのかというと、“若者の活発な生気を年配者に渡す”という意味があること、そして“毒見”の名残りであるともいわれている。ただし、家族に厄年の者が存在する年は、厄年の者が先に飲むものとされている。

 ちなみに、正月三が日に自宅を訪れた来客に対しても、新年のあいさつを交わしお屠蘇を薦めるのが礼儀となっている。

 とはいえ、忘れてはならないのは、お屠蘇は立派な「アルコール」であるということ。未成年者、妊娠中の人、お酒に弱い人、お酒が嫌いな人、運転をしなければいけない人は、自分の番が来たら「飲むふり」にとどめておく。もちろん、古くから伝わる習慣であろうとも、他者に強制的に飲ませるなどといったことは決して許されない。

■まとめ

 かつてはお正月の三が日といえば、あまり遠出せず、家族や親戚と過ごすのが主流であった。しかし現代は、海外旅行を楽しんだり、デパートの初売りに出かけたりなど、昔ながらのお正月とは違った過ごし方をする人も多く、一緒に過ごす相手も家族や親戚とは限らず、元日の朝に「お屠蘇」を飲まないという人もいるだろう。そういった現代事情もあってか、地味な印象を持たれがちな「お屠蘇」だが、実は案外手軽に作れるお酒。たまには日本古来の習慣に従って、飲んでみてもいいだろう。

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