●年越し蕎麦

 大晦日に食べるものと言えば、年越し蕎麦と答える人が多いだろう。この習慣は江戸時代に定着し、「つごもり蕎麦」「三十日ソバ」とも呼ばれるようになった。大晦日に蕎麦を食べる理由としては、下記のような意味がある、という説が挙げられる。

□蕎麦のように細く長く生きたい

□すぐ切れる蕎麦のように悪縁や災いを断ち切りたい

□植物としての蕎麦の生命力の強さにあやかりたい

□蕎麦を食べることで体内に溜まった毒素を流して健康になりたい

□かつて細工師がそば粉で金粉を集めたように金運を呼び寄せたい

□大晦日は忙しいから簡単に食事の準備したい

■今さら聞けない!?「大晦日」にまつわるアレコレ

●除夜の鐘

 本来の大晦日は歳神様をお迎えする準備の日であるため、神道由来の正月行事になる。しかし、除夜の鐘は仏教由来である。その辺りの宗教的な事情にこだわらない大らかさは、神仏習合がなされた日本人らしいところかもしれない。

 仏教では大晦日の夜のことを「除夜」と呼ぶ。「除」は古いものを捨て去り、新しいものを迎え入れることを意味するため、1年の節目の日となる大晦日を「除日」、大晦日の夜を「除夜」というのである。大晦日の夜から元旦にかけて、全国の寺では108回の「除夜の鐘」が打ち鳴らされる。108の根拠には3つの説がある。

(1)心をまどわせ、身を悩ませる人間の煩悩の数。六根と呼ばれる人間の意識の根幹、眼(げん/視覚)・耳(に/聴覚)・鼻(び/嗅覚)・舌(ぜつ/味覚)・身(しん/触覚)・意(い/意識)は、それぞれが好・悪・平という3つの状態、浄・染という2つの状態、前世・今世・来世という3つの時間軸を持っているとされる。そのため6×3×2×3=108という計算になる。鐘を突いた数だけ煩悩を取り除くことができると言われているが、最後の1回は新しい1年が煩悩に惑わされないよう、新年になってから突く寺が多い。

(2)4×9と8×9の答えを足した数。36+72=108という計算になる。百八つの鐘を突くと、四苦八苦から逃れることができるとされる。

(3)1年を表すために、12の月数と二十四節気、七十二候を足した数。12+24+72=108という計算になる。二十四節気と七十二候は、両方とも古代中国で考案された季節を表す方法である。

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