●手当の申請は忘れなく

 企業によっては、転勤に対して手当等の支給が行われる。例えば、引越し手当、転勤先での社宅の提供(家賃補助)、単身赴任手当(別居手当)の支給、単身赴任者に対する帰省旅費の支給、休暇取得、出張(週末に本社に出張させるなど)による帰宅への配慮、転勤時期の配慮など。手当等の手続きは人事・総務が自動的に対応してくれることが多い。健康保険や雇用保険などに関わるため、新住所が決まったら、総務部などの担当部署へ速やかに伝えること。

●家族がいる場合に気をつけたいこと

 結婚していて妻も子どももいる場合は、単身赴任と家族一緒の転居、どちらが最善なのか、冷静に判断したい。まずは子どもの新しい幼稚園や保育園、学校などを探さなくてはならない。保育園の待機児童問題にまた直面することもある。また、共働きの場合、妻の勤務状況も大きなカギとなる。妻が正社員の場合、転職を強いるのは厳しいだろう。

■拒否してもOK!? 労働基準法と転勤

 転勤の際、家庭の事情を考慮したことがある企業は、56.7%。その理由については、「親等の介護」が56.7%と多く、「転勤者自身の病気」「出産や育児」「結婚」「子どもの就学・受験」「配偶者の勤務(共働き)」と続く。親の介護をせねばならない年代に転勤が多いということが伺える。社員にとっては生活そのものが変わってしまうので、辞令が出たものの、転勤が難しいケースは多いだろう。

 そもそも転勤(配置転換)は、その企業の就業規則や労働協約などに根拠があれば、社員に命じる権限が認められている。勤務地や職務などの限定特約の合意が労使の間になければ、社員の合意なくして転勤を指示することも可能だ。しかし、前提として、企業は業務上必要がある場合、従業員の就業する場所、または従事する業務の変更を命ずることがあることを、就業規則に明記しておかねばならない。

 人事、上司からの突然の辞令。「いろいろな事情があるから断りたい」という場合、それは可能なのか。配置転換の辞令に関するこれまでの判例では、業務上の必要がない場合、または必要であっても目的・動機が不当な場合、社員に著しい不利益を負わせる場合、この3つのポイントが認められると、“転勤命令は権利の濫用になると判断”されている。とはいえ、転勤を理由に退職した正社員が「いる」と答えた企業は33.8%にものぼる。

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