■ありがちな菩提寺とのトラブル

●お布施編

 お布施は、明確な額が決められているわけではない。菩提寺の求める額と、檀家が支払う額の認識にギャップが生じると、トラブルの元になる。住職に尋ねると基本の額を伝えられるので、集まる香典の額なども予想した上で、できる範囲で支払おう。要求された額より少なくなってしまう場合は、法要を依頼するあいさつの際に、事情をきちんと説明すること。

●戒名編

 葬儀の際に、菩提寺があることを知らず、葬儀社などから紹介されたお寺で戒名をつけてもらうケースがある。基本的に、葬儀と戒名の名づけ、納骨は同一のお寺で行うものと覚えておきたい。別のお寺で戒名をつけてもらってしまうと、後から菩提寺の存在に気づいても納骨してもらえないかも!? 何かある前に、自分の家のお墓や菩提寺については把握しておこう。

●離檀編

 檀家をやめたいと申し出たとき、ビックリするような離檀料を申し渡されるケースがたまにある。また「払えないなら遺骨や位牌を渡さない」などと要求されることもある。日本は信仰の自由が認められているので、菩提寺に引き止める権利や、遺骨、位牌の所有権はない。しかし、改葬(お墓を移すこと)のためには、お寺が発行する「埋葬証明書」が必要。話し合いで和解できる額を探るか、法律の専門家に間に入ってもらうのも手だ。

■菩提寺にまつわるトリビア

【トリビア1】

 滋賀県の湖南市には、「菩提寺」という地名がある。国指定の史跡である「廃少菩提寺石多宝塔」(はいしょうぼだいじせきたほうとう)や石仏などが残っている。この市内にある名神高速道路の上り線、下り線上にあるサービスエリアは、その名も「菩提寺PA」。びっくりうどんや近江牛コロッケなどでも有名だ。

【トリビア2】

 寺号自体が「菩提寺」というお寺が、青森や福井、大阪をはじめ全国にいくつかある。福岡県の城南市にある「浄土真宗本願寺派 梅林山 菩提寺」は、月1回、プラネタリウムの上映を行うユニークなお寺。檀家の希望があれば、決められた日以外も上映してくれる。また、岡山県奈義町にも「菩提寺」がある。樹齢200年余の大イチョウが有名で、11月に実施されるライトアップが人気だ。

【トリビア3】

 歴史上の偉人たちの一家にも、菩提寺あり。有名どころを紹介しよう。

・徳川家 寛永寺(東京都/上野)、増上寺(東京都/芝大門)

・足利家 等持院(京都府/北区)

・上杉氏 林泉寺(山形県/米沢市)

・安土桃山時代の大名・宇喜多家 光珍寺(岡山県/岡山市)

・真田氏の始祖・海野氏 興善寺(長野県/東御市)

・牛久藩の画家・小川芋銭 得月印(茨城県/牛久市)

■まとめ

 宗教に無頓着な現代人は、菩提寺との関係性は薄れているといえる。しかし、いざ「お葬式をどうする?」、「田舎にあるお墓を移したい」といった状況に直面したとき、檀家になっているお寺との関係がカギになることは間違いない。最低限、自分の家の菩提寺がどこかだけは知っておくべきだろう。

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