■心筋梗塞、狭心症、解離性大動脈瘤に要注意

 では、危険な腹痛には、どのようなものがあるのか。また、危険な腹痛と、そうでない腹痛を見分けるには、どうすればよいのか。それぞれ紹介していきたい。「大まかに言えば、痛みの程度と症状ですね。これまで経験したことがないようなひどい痛みだったりしたら、すぐに受診されたほうがいいでしょう」(橋本氏)

 激痛と聞いても、なかなかピンと来ないので補足すると、医学生向けのテキストでは、その特徴を「心臓をわしづかみにされたような痛み」「胸をゾウに踏みつけられたような痛み」などと表現しているそうだ。痛みの現れる場所も、病気によって異なる。前述の心筋梗塞の場合は、「腹部の中でも、特に上腹部(みぞおち)に痛みが出ますね。それ以外にも、肩や背中、両腕、右胸などに放散痛が起きることがあります。また、同じ虚血性心疾患の狭心症にも、似たような症状が出ることがあります」(前同)

 心筋梗塞は、心臓の筋肉細胞に酸素や栄養を送る冠動脈が詰まったり穴が開いたりして血流が下がり、心筋が壊死する病気。これに対し、狭心症は冠動脈が一時的に詰まる病気だ。

 また、併せて出る症状でも見分けることができる。「心筋梗塞の場合は、吐き気や嘔吐を伴うこともあり、狭心症の場合は、締めつけ感、圧迫感を伴うことがあります」(牧氏)

 これらのような心疾患の場合は、腹痛を感じた時点で助かる可能性が低いと思われがちだ。しかし、狭心症も心筋梗塞も、早期に治療がなされれば、カテーテル治療なども進歩しており、救命できる可能性は高いという。

 次に紹介したいのが、解離性大動脈瘤。知名度は低いかもしれないが、心筋梗塞と同様、命に関わる重大病だ。心臓につながる重要な大動脈の壁は、簡単に破れないように、外膜、中膜、内膜の3層から成っているのだが、その一番内側の内膜の壁の一部が裂け、中膜に流れ込んだ血液が瘤になり、最悪の場合、破裂する病気である。「大動脈の壁がベリベリと剥がれていくのですから、その痛みは尋常ではありません」(橋本氏)

 この病気も、心筋梗塞、狭心症と同じく、腹部の中でも上腹部(みぞおち)に痛みが出やすい。また、胸や背中に出ることもあるという。また、その他の特徴としては、「顔面蒼白、発汗、ショック状態が伴うこともあります」(牧氏)

 放置して大動脈の裂け目が大きくなると、血流障害で、さまざまな臓器が虚血壊死を起こし、死に至ることもある。その反面、手術で治すことのできる病気でもあるので、早めの発見と治療が重要だ。

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