■急性膵炎、腸閉塞、虫垂炎も危険

 心筋梗塞、狭心症、解離性大動脈瘤と、ここまで循環器系の病気が引き起こす危険な腹痛を見てきたが、消化器系の病気にも、激痛を伴う危険な腹痛は存在する。その代表的なものとしては、急性膵炎、腸閉塞、虫垂炎の3つが挙げられる。まずは急性膵炎。膵臓は、インスリンなどの血糖値をコントロールするホルモンや、食べ物の消化に必要な酵素を分泌する臓器である。正常時は、その消化酵素で膵臓自体を消化しないように働いているのだが、なんらかの原因で、うまく機能しなくなると、活性化した消化酵素によって、膵臓は自分で自分を消化し始めてしまう。そのため、膵臓にむくみ、出血、壊死などの急性炎症が起こるのが急性膵炎だ。「アルコールの多飲が原因であることが多いので、お酒をよく飲まれる方は、特に要注意です」(牧氏)

 炎症を起こした膵臓からは、心臓をはじめとした他臓器に悪影響を及ぼす物質が分泌されるため、多臓器不全を併発して死に至ることもある恐ろしい病気だ。「腹痛は心筋梗塞、狭心症、解離性大動脈瘤ほどの激痛ではないものの、激しい痛みを伴います。この重大病も上腹部(みぞおち)が痛みますが、膵臓の位置である左上腹部に痛みが出るのが特徴で、左背、左肩、左手まで痛みが広がることがあります。また嘔吐や、ショック症状が見られることもあります」(前同) この急性膵炎は、重症化する前なら、適切な処置によって膵臓を安静にすることで治る病気でもあるため、早めの診断が命を救うのだという。

 腸閉塞は、その病名通り、腸が詰まる病気である。通常、腸が詰まることはないのだが、異物の詰まりや、手術後の腸管の癒着などが原因で起こる。大腸がんが腸管を狭めて引き起こすこともあるという。また、普段から便秘ぎみの高齢者の場合、便自体が原因となることもある。「この病気の場合は腹部全体が痛みます。急性膵炎と同じく、かなりの強い痛みを伴います。それに加えて、嘔吐も引き起こしますし、それに腸が詰まるんですから当然、排便、排ガスが停止します。また、腹部が膨れ、腸がゴロゴロ言うのが主な症状です」(同)

 最後は虫垂炎(盲腸)。虫垂内部で細菌が増殖し、炎症を起こして発生する病気で、炎症が進行すると虫垂は壊死を起こして穴が開き、膿液などがお腹の中に流れ出し、腹膜炎を起こした場合には、死に至ることもある。「初期段階では上腹部(みぞおち)、それに、へその回りが痛みます。それと同時に、吐き気、嘔吐、発熱を伴うこともあります。進行するにつれて、痛みが右下腹部に移動するのが特徴です。また、放置すると、痛みがどんどん増していきます」(同) 痛みに耐えても、この病気で痛みが引くことはないというから、我慢せずに、すぐ受診することを勧める。

 これまで見てきたように、腹痛が命に関わる病気であるケースは少なくないのだが、橋本氏によれば、腹痛は専門家の医者でも、その重大な病気の予兆を見過ごすことがあるくらい、診断は難しいのだという。「たとえば、近くの病院に見てもらい“胃薬出しておきますね”と言われ、その夜、心筋梗塞で救急搬送などというケースも決して珍しくないのです。ですから、腹痛を重大病の一つの予兆と捉えることが大事です。痛みが激しい場合は即、病院にかかられることをお勧めします。たかが腹痛などといって、決して侮らないでください」(橋本氏)

 痛みが我慢できないほど激しい場合は、無理をせずに救急車を呼ぶことも大切である。命を守るために、慎重な判断をしておいて損はないだろう。

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