■初出場ながら大きな注目を集める明秀日立

 そんな最強軍団の対抗馬として、冒頭のAクラス校はもちろんあるが、安パイばかり見ていては味気ない。「10倍楽しむ」ためには、やはり「番狂わせ」を期待させてくれるようなチームを見ていこうではないか。まず、初出場ながら甲子園関係者から大きな注目を集めているのが明秀日立。坂本勇人(巨人)、田村龍弘(ロッテ)、北條史也(阪神)を輩出した青森・光星学院を率いた名将・金沢成奉監督が、就任5年目にして甲子園に駒を進めたことで、脚光を浴びたのだ。明秀日立は金沢監督の人脈を使って、主に大阪から有力な選手を集め、チームの土台を作った。エースで4番の3年生、細川拓哉投手はDeNAに所属する細川成也の弟。投げては最速144キロの速球、打ってはフェンス直撃を連発、4割超の打率を誇る二刀流選手だ。「金沢監督は、お兄さんを“どんなきつい練習をさせてもついてこられる体の強さを持っている”と評していましたが、拓哉君も体の強さは折り紙つき。連戦では、これが有利になるでしょう」(持木編集長)

 もう一人、注目なのは遊撃手の増田陸。中学時代は大阪の福島シニアに所属し、前出の大阪桐蔭・中川卓也とチームメイトだった。「大阪桐蔭の山田と同じように、ポテンシャルは増田のほうが上だと思えるんですが、試合に出すと中川のほうが結果を出してしまうということだったようです。ただ、増田は昔の坂本勇人を彷彿とさせるところがあり、彼のように突如として開花しそうな雰囲気を持っていますね」(持木氏)

■愛知の刺客が虎視眈々!

 お次は愛知からの刺客・東邦の熊田任洋。「東邦の切り込み隊長」と信頼される1番打者だ。昨夏、1年生ながらスタメンに起用され、長打を連発。大舞台に強いところを満天下に知らしめた。愛知選抜や“野茂ジャパン”のメンバーにも選ばれたチームメイトの石川昂弥に強烈なライバル心を抱いており、「石川が活躍すると少し悔しい」という気持ちを隠そうともしない。2人が競い合って、打線を爆発させれば、東邦が優勝に近いところまで行ける可能性は十分あるのだ。

■中国勢にもワクワク

 24年ぶりに広島代表として甲子園の土を踏むのは、瀬戸内。その看板打者に、全国が刮目するかもしれない。183センチ・95キロの恵まれた体格から長打を連発する、門叶直己だ。昨秋の中国大会では8本のホームランを記録しており、そのうち4本は、なんと1試合での固め打ち。ただの大砲ではなく器用な流し打ちも得意とし、この大会では、とにかく打ちまくって打率が.769、13打点というバケモノっぷりを見せた。「当たればデカいんですが、安定しないところが弱点ですね。魅力的な打力を持っていることは確かで、全国レベルの強豪校と対戦して、どれだけの成績が残せるかは未知数です」と持木編集長が言うように、ひょっとしたら、ひょっとするタイプの選手で、観客をワクワクさせてくれそうだ。

 中国勢からはもう一人、初出場となるおかやま山陽から。エースの有本雄大は、130キロ台後半のストレートと3種類の変化球で相手を翻弄する、安定感のある投手だ。昨年夏の甲子園ではチームが1回戦で敗れ、登板機会はなかったが、柔よく剛を制する投球にはプロの注目も集まる。「ここの堤尚彦監督は、過去にジンバブエ、ガーナ、インドネシアなどでナショナルチームの監督やコーチを歴任した変わり種。地元出身者中心のチームを昨年夏、そして今春の甲子園出場を遂げるほど強くした手腕は、要注目かもしれません」(スポーツ紙記者)

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