■国立がん研究センターが死亡リスクを調査

 牧氏によれば、緑茶やコーヒーといった一般的な飲み物が体に良いかどうかの研究は、まず特定の集団を対象に、病気の発生頻度などを調査する疫学研究をやり、そのうえで、必要に応じて、どんな成分が働いているのか特定していくやり方で進められるという。

 その代表的な研究報告があったのは、2015年5月のこと。国立がん研究センターが、40~69歳の男女、約9万人を約19年にわたって追跡調査したものだ。それによれば、まず緑茶を1日1杯未満飲む人を基準に死亡リスクを比較すると、1日5杯以上の男性は13%低下(女性は17%)することが分かった。さらに死因別で見たところ、がんによる死亡リスクに、それほど差はなかったが、心疾患、脳血管疾患、呼吸疾患で、緑茶を多く飲むほど低下していることが明らかになった。

 これに対し、コーヒーをほとんど飲まない人を基準に死亡リスクを比較すると、1日3~4杯の人(こちらは男女別なし)が24%も低下。ただし、1日5杯以上飲む人だと、ほとんど飲まない人よりは15%低いものの、1日3~4杯の人よりリスクが上がっている。さらに死因別に見た場合、緑茶同様、がんでは、それほど差がなかったものの、やはり心疾患、脳血管疾患、呼吸器疾患ではコーヒーを多く飲むと低下していることが分かった。ただし、それは1日3~4杯までで、1日5杯以上では1日3~4杯の人よりリスクが高くなり、中でも心疾患については、ほとんど飲まない人よりも、逆に3%ながらリスクが高い結果となったのだ。

■カフェインは適度な量で

 この、ある程度多く飲んでもリスクが低くなる緑茶と、1日5杯以上だとリスクが高くなるコーヒーの違いは、いったい何なのか?「カフェインの副作用の可能性があります。カフェインは適度な量なら体にいい。緑茶にも、むろんカフェインは含まれていますが、その量はコーヒーの約半分ですから……」(前出の牧氏)

 カフェインを過剰摂取すると、不整脈や筋肉細胞が壊れる現象が起きることがあり、最悪の場合、死に至ることもあるという。牧氏が、こう続ける。「コーヒーはそもそも嗜好品で、体に良いかどうかの研究は最近までそれほどなかったんです。緑茶はよりそうで、私たちはこれまで水みたいに飲んできました。つまり、実はまだ、そこに含まれるどんな成分が体に良いかなど、詳しいことまでは分かってないんです」

 ポリフェノール、カフェインだけでなく、他の微量成分が効果をもたらしている可能性も考えられるという。なお、緑茶においては、うまみ成分の(テアニン)をポリフェノール、カフェインと併せて3大主成分とされ、このテニアンもリラックス作用、ストレス軽減という体に良い効果があるとされる。

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