■適切な飲み方は?

 さて、このように毎日、適度な量を飲む限り、緑茶もコーヒーも体に良い=健康長寿に導いてくれるらしいことは分かった。だが、両者にも違いはある。また、先にも触れたようにコーヒーの飲みすぎは、逆に死亡リスクを高めるなど、毎日の飲み方に工夫が必要だ。そこで、飲み方の実践解説で、緑茶とコーヒーの差別化を図りたい。薬剤師、鍼灸師で、漢方に詳しい平地治美氏は、その人の体質、目的に合わせた選択を勧める。「漢方の考えでは、緑茶は“気”を下ろし、逆にコーヒーは“気”を上げるとされます。したがって、“気”が上った頭痛持ちの人は緑茶がいいと思います。また、同じ人でも自身のテンションが高すぎるときは緑茶、元気がないときはコーヒーと飲み分けるのもいいでしょう」

 平地氏によれば、お茶の効能については禅僧・栄西が800年も前に著した『喫茶養生記』でも述べられており、ズバリ、苦み成分(カテキン)が「心(心臓)を強くする」と記されているという。また、頭痛に効果があるとされるお茶の成分が入った漢方薬もあるというから、古人の知恵はさすがというべきだろう。ここで平地氏は、カフェイン成分が多いコーヒーはむろん、「緑茶でも飲みすぎは禁物」と警告して、こう続ける。「幼児だけでなく、体力が弱っている高齢者も要注意。コーヒーも緑茶も、一度に“ドバッ”ではなく、ちょこちょこ飲んでください。それから、体を冷やすと良くないので、どちらもホットが基本になります。コーヒーはむろんブラック。砂糖は体に悪いだけですから……」 砂糖が多く入った缶コーヒーは控えめにしたい。

 さらに平地氏は、お茶では必ずしも緑茶に限定する必要はなく、カフェインが少ないほうじ茶、番茶などでも良いとも言う。牧氏も続ける。「実はノンカフェインのコーヒーでも、普通のコーヒー同様の健康効果があるとする報告もあるんです。適度の量のカフェインが有効なのは事実ですが、はっきり言って、どこまで長寿に有効かといわれれば、よく分からないというのが正直なところです」

■健康長寿により効果的なのは?

 こうして見てくると、カフェイン関連でやや疑問符がつくものの、コーヒーにはカフェイン同様、ポリフェノール成分も、緑茶の約2倍含まれているというから、どちらか一方に軍配を上げるはなかなか難しい。牧氏は、あえてどちらかが上かと聞かれれば、健康効果以外の部分で緑茶を推してくれた。「まず、日常的な物だと価格はコーヒーより安いでしょう。急須にお茶の葉を入れて煮出す必要もありません。手軽な粉末のインスタントお茶でも十分、健康効果があります。緑茶はコーヒーのように砂糖やクリームなど他のものを足すこともないので、カロリーが低く飲めるのもいいですね」

 以上のように、どの成分が健康効果をもたらしているかなどの詳細はまだ不明ながら、日本人の“日常の2大飲み物”が体に良いのは間違いない。今日からは、値が張る健康食品に頼らず、緑茶とコーヒーで、体と懐に良いヘルシー生活を送るのはいかがだろうか。

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