■地方による、風習の違い

 七夕行事の風習は、地方によって異なっている。中でも有名な風習を、以下に紹介したい。

●富山県黒部市「尾山の七夕流し」

 富山県黒部市尾山地区では、毎年8月7日に七夕流しが行われており、2004年(平成16年)には富山県の無形民俗文化財にも指定されている。この行事がいつからはじまったのか記録には残っておらず、正確なことは分からないものの、明治初期に生まれた人が「昔からやっていた」と言っていたため、少なくとも江戸時代末期には行われていたと思われる。

 夏休みに入ると、男子小学生は船(満艦舟)を、男子中学生は行灯(あんどん)を、女子小中学生は和紙で人形(姉さま人形)を作って、公民館などに集める。当日の夕方は、姉さま人形を先頭にして地区内を回り、

 午後9時になるとお囃子(はやし)が流れる中で、子どもたちが作った人形や舟、行灯を川に流し、一年の罪やけがれをはらい、病気や災害がないようにとお祈りする。

●沖縄県

 沖縄の七夕は旧暦7月7日に行われるのだが、その日はお盆に備えて墓を掃除するしきたりがある。ちなみに沖縄の墓は他の地域と比較しても巨大なことで有名で、墓掃除となると家族総出で行うのが慣例となっている。また、土葬が行われていた時代には、土葬された遺骨を掘り起こして洗う「洗骨」(シンクチ)という風習もあったのだが、これも旧暦の七夕に行われることが多かった。

●北海道「ローソクもらい」(ローソク出せ)

 北海道では七夕のときに「ローソクもらい」(ローソク出せ)という行事が行われている。これは10月のハロウィンと似ていて、夕方から夜にかけて浴衣を着てちょうちんを持った子どもたちが町内の家々を訪れ、歌を歌い、ローソクとお菓子をもらって回る。ほとんどの地域では8月7日に行われているのだが、富良野市、函館市、室蘭市など7月7日に行われている地域もある。

●宮城県仙台市

 宮城県仙台市では七夕の日にそうめんを食べる習慣が定着している。これは天の川に住む織姫のように機織や裁縫が上達しますようにと願うためだといわれている。

 今回紹介した地域のほかにも、七夕の日に何かしらの行事やしきたりを持つ地域は全国各地にあり、米に虫がつかないように祈る「虫送り」などと融合させてお祭りが行われたり、農作業で疲れた身体を休める日とされているなど、多くの地域で七夕は「特別な日」と考えられている。その一方で、幼稚園や保育園、商店街などでは、昔からの風習やしきたりを意識せず、七夕行事を“みんなが集まってわいわい楽しむイベント”の一環として捉えて実施するケースもある。

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4