定年退職者へのプレゼントから、退職準備とお金の話までの画像
定年退職者へのプレゼントから、退職準備とお金の話までの画像

 長く勤めた会社を定年退職し、のんびり暮らす日が本当に待ち遠しい……。そんな気持ちは分かるが、のほほんとその日を迎えては損をすることになるかもしれない。定年退職は人生の大きな節目。定年を迎える人に対するマナー、または自身がそろそろ定年を迎える人に役立つノウハウを解説したい。

■日本に定年ができたのは、終身雇用制のせい!?

 定年退職とは、一定の年齢になった労働者を自動的に退職させる制度。日本では1959年(昭和34年)からスタート。これは法律ではなく、定年制を採用するかどうかは企業による。多くの企業で“終身雇用制度”と、“年功序列の賃金体系”が採用されはじめたことによって普及したと考えられる。賃金は年齢とともに上昇するため、一定のラインを退職の目安とした。

 ちなみに、海外諸国の状況はいかがだろう。定年退職は、英語で言うと「Retirement」(リタイアメント)。アメリカ、カナダ、オーストラリアは一部の職種を除き、定年制度はみられない。イギリスでは、職種を問わず完全に定年退職はない。中国では男性60歳、女性50歳、女性幹部は55歳。韓国では2016年より60歳定年制が段階的に義務化されている。

■現在、日本の定年は60歳が主流

 2017年(平成29年)の「雇用管理調査結果」によると、2016年の時点で、95%を超える大部分の企業が定年制を定めており、大企業ほどその傾向が強い。企業が定年を定める場合、60歳を下回ることはできない。現在、定年の目安は65歳だが、定年は満60歳としている企業がほとんど。企業によっては65歳以上だったり、定年制をとっていないところもある。昔は男女で差があったが、男女雇用機会均等法の施行以降、男性も女性も定年は同じ年齢とすることになった。

●年齢制限の移り変わり

・1986年(昭和61年)に60歳での定年が企業の努力義務に。

・1994年(平成6年)には60歳未満への定年制の適用が禁止に。

・2000年(平成12年)には企業に65歳までの雇用確保措置の努力義務が課された。

・2004年(平成16年)には65歳までの雇用確保措置が段階的に義務化される。

・2012年(平成24年)には希望する雇用者全員を65歳まで雇用することが原則的な義務に。

 定年年齢の目安を定めているのは「高年齢者雇用安定法」。定年年齢が上がっている理由には、日本社会の高齢化にともなって働ける年齢が大幅に延びたことや、労働力不足がある。また、国民年金の受給を抑える目的もある。

 現在は、60歳を区切りとし、まだまだ働く意欲のある者を65歳まで雇用延長したり、再雇用したりする企業が多い。再雇用される場合は、退職理由が定年であっても退職届けを書かされるケースがある。企業にとっては仕事を熟知した人材を手放さずにすみ、雇用人にとっては他企業へ再就職する苦労がなく、賃金を得られる期間が延びるメリットがある。

 2015年(平成27年)に政府が打ち出した「一億総活躍社会」の内容には、定年年齢の下限を一律65歳まで引き上げるという案が含まれていた。もしかすると、近い将来、実現するのかもしれない。

■定年退職日はいつになる?

 いつが定年退職する日になるかは、企業によっていくつかのパターンがあり、勤めている会社の就業規定に明記されている。まず、「満年齢の誕生日を定年退職日とする」となっている場合は、勤務するのは誕生日の前日までになる。誕生月の月末日とするパターンもあり。

 また、一律で年度末と定める企業もある。定年の年齢になる誕生日を迎えた後、次にやってくる3月31日が退職日に。このパターンは、4月に新入社員の一斉雇用をする企業に多い。スタートが同じなのに、退職日が個々の社員の誕生日とバラつきがあると、トータルの賃金や退職金に差がつくためだ。

■退職金には税金がかかる

 企業の規定によっては退職金が支給される。厚生労働省による「平成25年就労条件総合調査結果の概況」によると、退職給付金制度がある企業は75.5%。大企業ほど多く、中小だと少ない。退職金は2タイプ。併用する会社もある。

・退職時にまとめて支払われる「退職一時金」

・退職後、一定の期間か生涯支払われる「退職年金」

 額はそれぞれの企業の規定に則して決められる。具体的には就業規定に載っているはずだが、入社時と変わっていることもあるので注意したい。勤続年数に比例する「年功型」がこれまでの常識だった。大学卒、高校・専門学校卒と学歴によっても開きがある。しかし最近では「成功報酬型」を採用するところも。退職前に未払い分の給与や退職金の支払日をチェックしておこう。

【ワンポイント】

「退職一時金」は退職所得となり所得税と住民税がかかるが、「退職所得控除」の対象になる。税額は勤続年数や受け取る金額によって変わるので、確認しておきたい。通常、「退職所得控除」は、「退職所得の受給に関する申告書」を会社に提出すれば、自分でやる必要はない。提出しないと、20%の源泉が徴収され、自分で確定申告をしなければならないので注意しよう。

「退職年金」の場合は、「雑所得」の公的年金等になるため所得控除の対象になる。「退職一時金」も「退職年金」も、受け取る金額によって税額が変わってくるので、どちらが得か計算しておいたほうがいいだろう。

【用意するもの】

・退職所得の受給に関する申告書

■健康保険への加入は真っ先に!

 退職すると、自ら任意の保険に加入する必要がある。主な選択肢は3つ。家族の健康保険の扶養に入る、または新たに国民健康保険に加入する。最長2年なら「任意継続被保険者」の申請をすれば延長できる。いずれも退職後すぐに手続きをしなくてはならないので、事前に決めておきたい。

【ワンポイント】

 どの保険を選ぶかによって手続きも必要なものも変わる。シニア期はより健康不安が高まるため、生命保険と合わせて見直したほうが良いだろう。

【用意するもの】

・「健康保険被保険者資格喪失証明書」

■失業手当をもらおう

 定年退職後も働く意思があるのなら、勤めている会社が加入する雇用保険から、6か月間は失業手当をもらうことができる。申請は自らハローワークで行う。手当の日額は在職中の賃金日額の45~80%で、給付制限はない。受け取れる期間は失業から1年間だ。失業手当は再就職活動中の人が対象。受給期間中は4週間に1回、ハローワークへ経過報告へ行く必要がある。

【用意するもの】

・退職後1週間~10日の間に会社が発行する「離職票」

・退職前6か月分の「給与明細」

・会社が管理している「雇用保険被保険者証」

・規定サイズの証明写真など

【ワンポイント】

失業手当と年金は同時に受給できないので、金額を試算し、比較した上で選択を。退職後、しばらく休みたい場合は受給期間の延長申請が可能。

■他にもある、雇用保険の手当て

 失業手当以外にも、雇用保険に加入していれば退職後、60歳以上で受け取れる給付金がある。「高年齢雇用継続基本給付金」は定年後に嘱託などの形態で働き続ける場合に、「高年齢再就職給付金」は失業保険を受け取っている期間中に再就職したが、賃金が下がる場合に受給できる。

【用意するもの】

・「高年齢雇用継続給付受給資格確認票」

・「高年齢雇用継続基本給付支給申請書」

・「払渡希望金融機関指定届」

・「支給申請書」と賃金証明書の記載内容を確認できる書類等及び被保険者の年齢が確認できる書類など

・被保険者の年齢が確認できる書類など(「運転免許証」や「住民票」の写し)

【ワンポイント】

 失業保険の申請をした後に受け取れる。それぞれ細かな条件があるので、ハローワークで問い合わせた上、比較検討をしたい。

■老後のために年金受給額の目安は早々にチェック

●国民年金

 65歳以上なら年金の受給が可能。

【用意するもの】

・受給資格が発生する3か月前に届く「年金請求書」

・「戸籍謄本」、「戸籍抄本」、「住民票」などいずれか

・世帯全員の「住民票」、配偶者や子供の収入が確認できる書類など

【ワンポイント】

 老後のプランを立てるためにも、退職前から受け取れる年金受給額の目安を知っておきたい。まずは自分の「年金手帳」をチェック。そこに記載されている「基礎年金番号」を使って情報を調べられる。日本年金機構から59歳以上の人に届く「ねんきん定期便」を確認する、年金事務所へ実際に足を運んで問い合わせる、またはネットサイトでも試算できる。

■上司や家族が定年退職したら、お祝いはどうする?

 職場の上司や先輩、自分の親など、親しい人が定年退職するときは何かプレゼントをあげたくなるもの。相手は60代の男性か女性。どんなものが喜ばれるだろうのだろうか?

【仕事関係の人へのプレゼント】

 退職祝いは、チームや部署でお金を出し合って記念品をプレゼントするのがいい。物を贈る場合は、1人5000円~1万円が相場。何を選ぶかは悩ましいところだが、相手の人となりに合ったものを。既婚なら対になったグラスや食器など、お酒を嗜む人ならアルコール類、ゴルフが趣味なら関連グッズなど。趣味嗜好が分からない場合は、マフラーや万年筆、マグカップといった無難なものか、カタログギフトもオススメだ。

 お祝い金を包むなら、ご祝儀袋に入れ、水引は「何度あっても喜ばしいお祝い」という意味のある紅白のちょう結びで。表書きには「御退職祝い」「御礼」「感謝」「おはなむけ」などと書く。

 また、送別会を開き、花束と色紙を用意。本人からは会費を徴収しない、というパターンもある。

【家族や親族へのプレゼント】

 自分の父母や配偶者の親、親族などに渡す場合の予算は、2万円前後。本人に欲しいものを聞いてもいいし、ずっと欲しがっていたものを贈ってサプライズを演出するのもアリだろう。また、ねぎらいの意味で旅行をプレゼントしたり、ちょっといい店へ食事に招待したりするのもいい。

●退職のあいさつメールや手紙

 定年退職をする日が近づいたら、社内外の人へあいさつのメールや葉書を送っておきたい。退職する日付、在職中にお世話になった謝意を伝えるのはもちろん、仕事の引き継ぎのことなども伝えておくべきだ。逆に、退職のお知らせメールを受け取ったら、当然返信するのがマナー。これまでのお礼と、今後の健康と充実を祈る旨を伝えよう。

●退職祝いの返礼品

 職場の部下から退職祝いの品をもらったら返礼はどうするべきか。花束程度なら、特にお返しの必要はなさそうだ。プレゼントをもらった場合は、その品物のおよそ1/3程度の額のものを返したい。お菓子などが無難だ。最近は「ありがとう」、「THANK YOU」などとメッセージが入っていたり、小分け包装になっていたりする便利な贈答用のお菓子も多い。

■まとめ

 シニアライフの見通しを立てるにあたって、定年退職で得られるお金の算段はその後の人生に大きな影響を及ぼす。退職金や給付金の見積もりをしてみて、貯金するなり住宅の購入に充てるなり、家族とよく相談したいものだ。定年の1年前からのスケジュールや、退職時にすべきことをチェックリストや漫画の形式で紹介したマニュアル本も多く出ている。失敗のないように定年退職に臨みたい。

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