ビートたけし、独立騒動にみる美学「映画と女と師匠の教え」の画像
ビートたけし

 殿ご乱心――芸能界はいまだ混乱が続いているが、たけし本人はいたって冷静だった。彼が貫く生き様の美学とは!?

 本誌が前号でスクープしたビートたけし独立劇の内幕。「騒動を機に退社するマネージャーが多く、たけしさんが去った後の新体制についても、具体的なイメージが固まらない状況のようです」(民放局関係者) “稼ぎ頭”のたけしを失った痛手は、想像以上なのだ。

 一方のたけしは、レギュラーを務める『新・情報7days』(TBS系)の3月17日放送で、自ら騒動を振り返り、「(独立後も)何も変わらない。仕事を増やすわけでも減らすわけでもない」と説明。さらに、「退職金もらってないんだよ。3億はもらえたはずなんだけど……」と、窮地に立たされるであろうオフィス北野に資金を残したことを明かした。

■『アウトレイジ』のヒットで映画に一区切り

 その前日、たけし軍団の番頭格のガダルカナル・タカも、『情報ライブミヤネ屋』(日本テレビ系)で、「事務所と軍団のことを考えてくれて、株を処分して、運転資金として事務所にびっくりするくらいのお金を残してくれたので、運転資金としては心配することがない状況」と、師匠の“変わらぬ親心”に感謝してみせた。「タカさんは同時に、“今、たけしさんが夢中になっているのは小説”だと明かしていますが、実際に、たけしさんの興味は映画から小説に移っているようです。そして、このことが今回の独立騒動の一因になっているとか」(芸能記者)

 たけしは、本名の“北野武”名義で映画作品を数多く手がけているが、それらの作品は日本はもとより、海外で高く評価されている。「1998年に公開された『HANA-BI』は、ヴェネツィア国際映画賞で金獅子賞を受賞しています。欧州を中心に“キタニスト”と呼ばれる熱狂的ファンも多く、私が取材したことのあるフランス人の男性ファンからは、今回の騒動を受けて、“キタノはもう映画を撮らないのか”と、質問のメールも来ました」(映画誌記者)

 実は、今回のたけしの事務所独立で真っ先に“リストラ要員”となったのが、映画専門のスタッフだという。オフィス北野には、タレントのマネージメントを行う社員に加え、北野映画のための専門スタッフも所属していたのだ。「たけしさんは以前、“テレビに出ているのは、ギャラを資金に映画を作りたいからだ”と話していましたので、映画がすべてだったんだと思います。ところが、それだけ情熱を傾けて映画を撮っても、なぜか興行収入の面ではパッとしなかった。作品自体は高い評価を受けても興行的には成功しないこれが、たけしさんのジレンマだったようです」(前同)

 この状況が、『アウトレイジ』シリーズで一変する。「シリーズ第1作は、2010年に公開されました。この作品は興行的にも黒字となったんですが、たけしさんは“もっと売れてもおかしくないのにな~”と満足できなかったようです。そこで、本来は1作で終わる予定だった『アウトレイジ』の続編が製作されたわけです」(同)

 続編の『アウトレイジビヨンド』(12年公開)は、大ヒット。前作を大きく上回る収益を叩きだした。「昨年公開された3作目の『最終章』は、シリーズ最高の15億円を超える興収を叩き出す大ヒット。これで、たけしさんは、“北野映画は興行的に成功しない”という呪縛から解き放たれたんでしょう」(同)

『アウトレイジ』シリーズのヒットにより、たけしは映画に“一区切り”をつけることができたというのだ。

■純愛小説『アナログ』が大成功

「小説に関心が向かったのは、その反動でしょう。たけしさんは、85年に出した『あのひと』と88年の『浅草キッド』で、直木賞候補と噂された時期もありました。ただ、これらの作品にはゴーストライターがいたといわれています。負けん気の強いたけしさんですから、“自分で書いて賞を獲ってやる”と思っているんでしょう」(前出のフリー記者)

 実際に、昨年9月に発売された書き下ろしの純愛小説『アナログ』は、3週間で10万部を突破するなど、大成功を収めている。「同じ芸人の又吉直樹さんが『火花』で芥川賞を獲ったことも、影響しているんじゃないでしょうか。ともかく、映画への関心が薄れたことが、“北野映画のスタッフの受け皿”でもあったオフィス北野から独立するに至った一因だとされています」(前同)

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