一球投げるごとに大歓声が巻き起こる。3月31日、開幕2試合目の東京ドームでの阪神戦。5対4と1点リードの場面で迎えた8回表、10年ぶりに古巣・巨人に復帰した上原浩治は大山悠輔、糸原健斗、高山俊の3人を11球で仕留めた。見せ場はその直後にやってきた。ベンチに戻った上原は拍手で出迎える仲間たちと両手でハイタッチを交わしたのだ。バシーン、バシーンと音まで聞こえてきそうな勢いだった。中にはグラブで顔をはたかれている者までいた。手荒い“祝福返し”である。

 翌4月1日も8回表、上原は3対2と1点リードの場面でマウンドに上がり、12球で3人を退けた。上原の2日続きの好投で巨人は阪神に連勝した。無駄球を一切投げない上原の投球術はさすがである。しかも、気持ちが前に出ている。その表れが仲間を鼓舞するハイタッチだった。

■WBCでの青木宣親のハイタッチ

 思い出したのは、昨年の第4回WBCでの青木宣親(現東京ヤクルト)のハイタッチだ。1次ラウンドB組初戦のキューバ戦。2番打者が放った右中間への飛球をセンター青木は懸命に追いかけ、ジャンプして好捕した。抜けていれば逆転もありえた。走ってベンチに戻った青木は誰かれ構わずハイタッチを交わした。バシーンと手をはたかれた投手コーチの権藤博は、こう語っていた。「普通はパンパンという程度でしょう。ところが青木の場合、バーン!バーン!なんです。口には出さないけど、“オー、行くぞ!”というメッセージが込められていた。あのハイタッチで、寄せ集め集団が一枚岩になれたんです」

 上原が10年ぶりなら、青木は7年ぶりの古巣復帰である。上原が自らのことを自嘲気味に「便利屋」と呼べば、青木は4番ながら「つなぎ役です」と謙遜気味に答える。いずれ青木の“凱旋ハイタッチ”も見られるだろう。実績もネームバリューもある元メジャーリーガーが、昨季Bクラスのチームに喝を入れている。

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