北朝鮮・金正恩、世界を惑わす「伝統の三枚舌」の画像
北朝鮮・金正恩、世界を惑わす「伝統の三枚舌」の画像

 すごいのは髪型だけではない。武力を背景に自爆テロさながらの威嚇行為を続けてきた暴れん坊将軍が急に変節!?

「心から拍手を贈る国民の姿に、深く感動した」 4月1日、こう語ったのは、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長。これまでずっといがみあっていた韓国が平壌に派遣した『韓国芸術団』のコンサートを見ての大絶賛だが、どうにもキマリが悪い。北朝鮮では、思想統制のため、韓国の音楽や芸術に触れることを原則的に禁止して来たからだ。

『コリア・レポート』編集長の辺真一氏が言う。「北朝鮮の教化所(刑務所)には“Kポップを歌った”という理由だけで、収監されている人がいる。アメリカの人権団体『北朝鮮人権委員会(HRNK)』は、このことを問題視しています」と、かつての北朝鮮はゴリゴリの国体護持、タカ派外交を押し通していた。

 ベテランの政治記者が言う。「1953年、朝鮮半島は38度線で南北に分断。初代・金日成、2代目・金正日に続き、2011年、20代後半の若さで国のトップへ就いたのが、3代目の正恩です。就任以降、今まで以上に、核実験やミサイル開発へ注力し、韓国、アメリカをはじめ、周辺諸国を“火の海”にするぞと脅してきました」

 それが一転、“デレデレ外交”。正恩氏は、韓国のアイドルグループ『レッドベルベット』の公演を観覧。メンバーと握手までして、「こういう場の素晴らしさを文在寅大統領に伝えてほしい」とベタ褒め。秋波を送ったのだ。「主張をコロコロ変える、二枚舌ならぬ“三枚舌”外交は、北朝鮮伝統のお家芸。先日、正恩が口にしていた“非核化実現は先代の遺訓”も、伝統の常套句。先代・正日は、05年にそう話しながらも、翌年に核実験を挙行。初代・日成も非核化を宣言しながらも、コッソリ核開発に努めてきました」(前同)

■平昌冬季オリンピックで勝負に出て

“伝統の三枚舌”に従い、上辺だけの「ほほえみ外交」を見せているが、今回の変節は、この冬の韓国・平昌冬季五輪で始まった。「平昌冬季五輪は、チケットの販売が壊滅的状況で、収支どころか、国家のメンツも危ういところだった。そこで、韓国政府は北朝鮮に泣きつき、アイスホッケー女子の南北合同チームを結成。開会式でも、合同入場行進を見せ、“南北融和”を大会の目玉としたんです」(前同)

 国際社会で韓国の足元を見て、孤立を深める正恩氏は、勝負に出た。「三池淵管弦楽団、美女応援団、妹・金与正(党第1副部長)らを韓国へ送り込み、世界中のメディアを席巻。果ては、28億6000万ウォン(約2億8900万円)もの資金援助を韓国から引き出し、そこにプラスして、4月27日に南北首脳会談を開催する約束まで取りつけたんです」(外務省関係者)

 2000年、韓国・金大中大統領と北朝鮮・金正日国防委員長(ともに当時)が、歴史上、初の首脳会談を開催した際も、「韓国は北朝鮮へ、4億5000万ドル(約450億円)もの金を送金したとされています。“言われるがまま”です」(前同)

 北朝鮮事情に詳しい外交評論家の井野誠一氏が言う。「平昌冬季五輪でも、韓国側が北(正恩)の思う通りに応じ、動いたわけです。そして、この韓国との関係改善のムードをバネに、対米関係の改善を仕掛けると、予想以上の反応がトランプ米大統領から得られた。それが、5月中に米朝首脳会談を開催するという話へつながっていったのです」

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