マウレアとともに挑んだ桜花賞が、区切りとなるJRA通算2万1000回騎乗となりました。初騎乗は、1987年3月1日の阪神4R400万下、ダート1200メートルのアグネスディクター。僕は当時、栗東・武田作十郎厩舎所属のジョッキーでした。ピカピカの馬体と抑えきれない闘志……前週でも使える状態だった馬を、わざわざ僕のために出走を1週待ってくれてのデビュー戦。あのときのレースを思い出すと、苦い笑いが込み上げてきます。

 やや出遅れ気味にスタートして、道中4、5番手。いい手応えのまま4コーナー手前で前に進出したのですが、少しだけ内に動いたそのとき、後ろから、「あっ!」という声が聞こえてきたのです。慌てて振り返ると南井騎手が落馬していて、直後に審議のランプが点滅。今なら最後まできっちりと追い、裁定はその後のことだと思い定めることができますが、当時の僕にはそんな余裕がなくて(苦笑)。なんとか気持ちを立てなおして追いはじめたときには後の祭りです。しかも、レースが終わって戻ると、南井さんの落馬は僕とは無関係だったことが分かって……なんとも、とほほな初騎乗となってしまいました。

■オグリキャップやメジロマックイーン、サイレンススズカの勇姿

 あれから31年……ほんとに数多くの馬に乗せていただきました。初勝利を挙げたダイナビショップ。G1を勝つ馬というのはどんな馬なのかを教えてくれたスーパークリーク。親父・武邦彦とともに挑んだバンブーメモリー。ざわめきが感動に変わったオグリキャップ。プロフェッショナル・ジョッキーを意識したメジロマックイーン。夢をつかんだスペシャルウィーク。乗り味から息遣いまで覚えています。エアグルーヴ。ファレノプシス。アドマイヤグルーヴ。ベガ。ファインモーション。ウオッカ……最高にステキな女の子たちとの出逢いも忘れられません。ナリタブライアン。アドマイヤベガ。タニノギムレット。シーキングザパール。クロフネ。サイレンススズカ……次から次へ勇姿が浮かんできます。ディープインパクト。キズナ。そして、キタサンブラック……一緒に夢を追いかけた日々は、本当に幸せな時間でした。すべての馬に、調教師の先生に、オーナーに、応援し続けてくれたファンの方に、感謝しています。

 ただ――。2万1000回騎乗は、いまだ、道半ばの数字です。これからも、ひとつでも多く騎乗し、ひとつでも多くの白星を挙げるために頑張りますので、これからも、武豊を、競馬を、見続けてください。

■エアスピネルとのコンビでG2マイラーズカップ!

 今週は、18日、大井競馬場で行われるJpn3の「東京スプリント」で始動(パートナーはグレイスフルリープ)。週末22日は、エアスピネルとのコンビで、G2「マイラーズC」に挑みます。春の最大目標である安田記念(6月3日)で大きな勲章を手にするためにも、ここで恥ずかしいレースはできません。

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