ラッキールチアーノ末裔・マフィア自叙伝が出版
『ゴッドファーザーの血』(マリオ・ルチアーノ)

 麻生太郎元首相が訪問を熱望し、この2月、ついに訪れた店がある。

 東京・茅場町のイタリアンレストラン『ウ・パドリーノ』。シチリアの言葉で「ゴッドファーザー」を意味する同店の持ち主は、エミリオ・マリオ・ルチアーノ氏。彼こそ、映画『ゴッドファーザー』のモデルの一人になったとされる伝説のマフィア、ラッキー・ルチアーノの末裔だ。

 ルチアーノ家のマフィアの血を受け継いで生まれ、数奇な運命から日本でヤクザとなった男が、ついに口を開くーー。

■「麻生さんとはマフィア談義に花が咲きました」

「麻生さんはマフィア・ファッションがトレードマークだそうですが、来店したときも、ボルサリーノを斜めにかぶって、黒のロングコート姿。まるで映画俳優のようでした。映画『ゴッドファーザー』の大ファンだった麻生さんが、ラッキー・ルチアーノの末裔である私に興味を抱いてくれたそうです。

 当日はラッキー・ルチアーノが愛したイスラエル製の本物のピクルスとコンビーフを入れたサンドイッチを用意しました。麻生さんは、赤のシシリアワインと一緒に召し上がっていましたね。ずっと上機嫌で、葉巻をくゆらせて、マフィア談義に花が咲きましたよ」

 そう語るマリオ氏は、1964年生まれ。今年で54歳になる。彼が生まれる2年前、62年にナポリでその生涯を終えたラッキー・ルチアーノは、ニューヨークで「カステランマレーゼ戦争」と呼ばれる抗争を勝ち抜き、マフィアという組織の改革に乗り出した功労者だった。

 マリオ氏の祖母・テレーザにはロザリアといういとこがおり、このロザリアの息子が、ラッキー・ルチアーノという関係になる。マリオ氏が生まれたのはイタリア・シチリア島のカターニア。5歳のとき、ニューヨークに父と移住することになる。

「アメリカで父が頼りにしたのは、母方の祖父と伯父。ファミリー関連の仕事をしていた。祖父はいつも人からの相談を受けるとき、相手には見えないように拳銃を握っていました。それだけ危険な経験をしてきた、ということなんでしょう」

 マリオ氏も、祖父の店に集う高級なスーツをまとい、香水の匂いを漂わせるファミリーの男たちに憧れを抱いた。

「ファミリーの仕事に手を染めたのは9歳のとき。ガンビーノ・ファミリーの大物幹部に茶色い紙袋を渡されて、2ブロック先の店に届けるように、と言われた。仕事を終えると、20ドルもらった。後で知ったんですが、マフィアの大人たちは、縄張り内で暮らす子どもたちを普段から注意深く見守っていたようです。その中から器量のある子どもを見極めるためにね」

 マリオ氏は、次第に深く仕事にかかわるようになる。運び屋の仕事に加え、非合法カジノの手伝い、そして窃盗など。このニューヨーク時代にマリオ氏は、フランシス・フォード・コッポラ監督とも会っている。

「コッポラ監督が、『ゴッドファーザー』の撮影中に、祖父の店に来たんです。当時は少年でよくわかりませんでしたが……現在では、偉大な監督だったのだとおもっています」

■世界を渡り歩く中での日本との出会い

 その後、祖父と伯父を相次いで亡くしたマリオ氏はニューヨークを離れる。コロンビア、チェコ、ナポリ、シチリア、パキスタン、フィリピンと世界中を転々とした彼が訪れたのが日本だった。

「マニラでは大学にも行きましたが辞めて、銃の密売や、父の仕事の手伝いなどをしていました。19歳でしたね。

 当時のマルコス大統領関連の仕事で父が知り合ったO会長という広域暴力団の幹部と仲良くなりました。マルコス大統領が失脚すると、危険を避けるため、別な国に移る必要があった。それで日本を選んだんです。まさか、こんなに長くいることになるとはね……」

 87年、マリオ氏は父と父の後妻と日本に降り立った。23歳だった。受け入れ準備を整えてくれたのは、フィリピンで知り合ったO会長。マリオ氏の家族が居を構えたのは神戸・芦屋だった。

 大理石の輸入ビジネスを始めた父の手伝いをしながら、マリオ氏は東京へ。そこでも大物右翼の仕事を手伝うようになった彼は、元総理と超大物政治家、そして高倉健といった面々と奇跡のような出会いを重ねた。

「日本語を学ぶために見た日本映画で、特に気に入ったのが高倉健さん主演の映画でした。その健さんと私は銀座三越2階のカフェで、1時間近くお茶をしたことがあります。夢のような時間でしたね」

 91年には神戸に戻り、父の仕事を手伝う中で、知り合ったX会の組長から「盃」を受ける話が持ち上がった。そして、その後「経済ヤクザ」として活動することとなる。

「X会の組長に心酔したことで盃を受けました。ジャパニーズヤクザとなったことで、伝説的な親分や大物幹部にもお会いすることができました」

 その後、さまざまな出来事を経て、マリオ氏はヤクザの世界から足を洗う。

「私が知り合った日本の親分やヤクザは皆、気持ちが温かく、裏切りに遭うことはありませんでしたね。今の私にとって大切なもの、それは、愛する一人の日本人女性と自分のレストランという場所です」

 そういって、満足げにゴッドファーザーの末裔は微笑んだ。誇りと愛を胸に、今日もマリオ氏は店に立つ。

 数奇で壮絶な半生をつづった書籍『ゴッドファーザーの血』(双葉社)は4月25日に発売される。

あわせて読む:
・裏話続出! 『海辺の週刊大衆』公開記念トークショー密着レポ
・梅宮辰夫「名言だらけのディナーショー」30針縫っても、麻酔が切れても「俺はやる!」