■海外でのPKO活動は危険すぎる

 日報問題の背後にある、“日の丸自衛隊”の知られざる姿――その真実は、かなり“いびつ”なのだ。「自衛隊では部隊ごと、年1回の身上調査で、海外での活動を希望するかどうかの意思を必ず確認します。殉職する可能性があるため、“志願している”ことを派遣の前提にしたいからでしょう。国民の多くは知らされていないかもしれませんが、海外でPKO活動に従事する自衛隊の活動は、それほど危険だということです」(軍事ジャーナリストの黒鉦英夫氏)

 どれだけ危険なのか。日報問題で問題になったイラクへのPKO活動(03年~09年)は、NHKが『クローズアップ現代』の「イラク派遣 10年の真実」(14年4月16日放送)で取り上げたため、ご存じの読者もいるだろう。番組では、自衛隊員が迫撃砲による攻撃を13回受けていたと報道。また、迫撃砲弾の炸裂した痕を撮影した動画の他、武装勢力が襲撃してくるかもしれないという情報を得て、自衛隊員がヘルメットと防弾チョッキの着用を命じられるシーンが公開された。「中東・ゴラン高原でのPKO活動(1996年~13年)についても、自衛官が銃撃を受けたという噂があり、任務現場の実態はベールに包まれていると言えます」(通信社記者)

 この他、日報問題の“火付け役”である南スーダンのPKO活動(12年~17年)では、本誌の取材に対し、ある自衛隊関係者が衝撃の告白をしてくれた。なんと、「9回も戦闘行為に陥ったという報告を受けている」と言うのだ。「当時の国連の事務総長は“(南スーダンでは)大規模な残虐行為が発生する現実的な危険がある”と述べ、PKO活動に参加した中国軍が政府軍と反政府軍の戦闘に巻き込まれ、16年7月には2人の戦死者が実際に出ています。そうした事実上の“戦地”に、自衛官は派遣されていたわけです」(前同)

 そのような危険な“戦地”に派遣されている自衛隊員にとっての“命綱”となるのが装備なのだが、それがまた心もとないという。たとえば、自衛隊がイラクのサマワに派遣されたときに使用された96式装輪装甲車。これは普通科隊員(歩兵)の輸送に使用するものだ。ところが、「この装甲車は、国内で使用する車輌に比べて防御力が強化されていたとはいえ、イラクで多用された強力なIED(即席爆発装置)から、乗員の生命を守れるレベルには達していない可能性がありました」(軍事ジャーナリストの竹内修氏)

 しかも現地では、砂漠の熱波でオーバーヒートしてしまい、実際に使い物にならなくなっていたという。「南スーダンで中国軍が戦闘に巻き込まれた一件では、装甲車にロケット弾が命中して犠牲者が出ています。しかし陸上自衛隊は、中国軍の装甲車より防御レベルの低い軽装甲機動車しか、南スーダンに持ち込んでいなかったんです」(前同) これも、「正規軍ではないことのしわ寄せが来ていることは否めない」(同)というのである。

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