“城郭ライター”萩原さちこさんとの対談の後編です。前回は、外観的に美しいお城ベスト3を教えてもらいました。しかし、そこには美しさだけでなく、当時の職人たちの知恵や工夫、そして美意識が詰まっていることも知りました。そこで今回は男性が好きな軍事的要素の強い「山城」を紹介してもらうことに!
■戦国時代の城はほとんどが山城
ゆま「実は今年初め、このコーナーで島田秀平さんにお会いしたとき、2018年のパワースポットは山城とおっしゃっていました」
萩原「それならなおさら山城巡りにも挑戦してみてください。私も実は山城のほうが好きなんですよね」
ゆま「山城ってのは文字通り、山の中に作られたお城ってことですよね?」
萩原「はい。戦国時代のお城は、ほとんどが山城なんです。姫路城や彦根城など江戸時代に築かれたお城は小高い山や丘に作られた平山城で、天守などもあって豪華絢爛なんですね」
ゆま「え? 山城には天守がないんですか?」
萩原「戦国時代の城にはなかったんです。天守が誕生するのは戦国時代末期で、天守はほとんどが江戸時代に作られたものなんです」
ゆま「そうなんですね。お城の天守を見ながら“戦国ロマンを感じる~”なんて言ってしまったら、恥ずかしいですね(笑)」
萩原「アハハ。新潟にある春日山城は上杉謙信がいた、戦国時代の山城の典型です。謙信の城だから、さぞかしすごい天守があると期待される方も多いんですが、石垣も水堀もない、一般の人が見たら、ただの山です」
ゆま「ガッカリしちゃいますね」
萩原「でも、それこそが戦国時代の城なんです。そのことを知っておくと、本当の意味で戦国ロマンを感じられると思いますよ」
ゆま「今は何もない山でも数百年前は、大名や武将が歩いていたんですもんね」
萩原「はい。それに山城はまさに自然の地形を利用して、さまざまな軍事的な工夫が施されているので、軍事好きや地形好きにとってはたまらないんですよね」
■オススメの山城ベスト3は!?
ゆま「おおっ。そんな山城で、オススメのベスト3を教えてください」
萩原「山城初心者の方には、静岡県三島市にある山中城をオススメします。ここは障子堀がきれいに残っているんですね」
ゆま「(障子堀の写真を見ながら)すごい、格好いい。こんな複雑な物が作られていたんですね」
萩原「特に関東の地質はロームなので、土が滑るんです。山中城の障子堀の障壁の高さは低い所でも2メートル。敵がよじ登れないように作ってあるんですね」
ゆま「おおっ。血が騒ぎます(笑)。城攻めしたい!」
萩原「お城巡りは、そういう楽しみ方もあります。自分が武将なら、この城をどう攻めるか。そんな妄想を膨らませて楽しむんですね。他にオススメと言えば、最近大人気の竹田城」
ゆま「知っています。天空のお城ですよね」
萩原「はい。雲海でも有名ですが、竹田城の石垣は古いんです。全国のお城の石垣は1600年以降に積まれたものが多いんですが、竹田城には1590年代に積まれたものが良好に残っている。歴史的にも価値があるんです」
ゆま「へえ~。わざと雲の上に作ったんですか?」
萩原「基本的に山城は見通しがよい所に作られます。城から周囲を見渡せなければ、敵の進軍に気づけないからです。竹田城があるのは国境の、街道が交差する場所。街道を見下ろして敵を監視するわけです」
ゆま「なるほど~。軍事的な理由で、こうなっているんですね」
萩原「もう一つ、山城では備中松山城も面白いです。ここは山城ながら現存天守があるんです」
ゆま「え? 山城に天守はなかったのでは?」
萩原「はい。戦国時代にはないんですが、江戸時代には天守が作られたんです。つまり、備中松山城に行くと、中世の城と近世の城を両方楽しめるんです」
ゆま「面白い。勉強になります。城を知ると、歴史をもっと知りたくなります」