■原辰徳はすごい

 続いて、投手から見た超プロ野球級の選手を紹介しよう。94年に新人王に輝き、阪神のエースに君臨していた藪恵壹氏は、こう答えた。「僕が実際に対戦して、一番すごいなと思ったのは原辰徳さんですね。当時は、他にもすごい選手はいましたが、原さんのバッティングが一番印象に残ってます。特に衝撃的だったのが、甲子園で打たれたホームランなんです」

 その打ち方は、独特だったそうだ。「どの選手にとってもインコースを打つのは難しいんですが、ホームベース上を通って内側に食い込むゾーンを打てる人は、なかなかいない。そのコースのボールは、打たれても詰まるのが通常です。“ああ、詰まったな”と思ったら、その球がスタンドに飛び込んでいって、“えぇーっ”ってビックリしました。あの技術はすごい。たとえば落合さんはどっしり構えて広角に打つタイプですから、ああいう球は打てない。あれは原さんにしかできない芸当だと思います」(藪氏)

 巨人に6年間在籍していた橋本清氏は、あの“いぶし銀”が印象に残っているようだ。「実際対戦してみて、すごいと思ったのは、阪神の和田(豊)選手ですね。とにかく粘る粘る。くさい球はうまくカットして、なかなか三振しないんで、投げていて嫌になるんですよ。スイングがすごいタイプの選手も怖いけど、穴があるんですよ。だけど、和田さんのようなタイプには穴がない。球数もいっぱい投げさせられるし、ボディブローのように効いてくるんです。派手さはないかもしれないけど、三振を取ることを諦めさせられましたもんね」

■藤川球児のストレートはすごい勢い

 さまざまな分野での「超プロ野球級」が集まっているのがプロの世界なのだ。阪神にドラフト1位で入団し、その後、西武に移籍してセットアッパーとして活躍した藤田太陽氏は、若手の頃と経験を積んだ後とで、すごいと思った選手がいる。「やっぱりすごかったのは(藤川)球児でした。ストレートがすごい勢いで来ましたから。ただ、当時は僕も若かったですし、分からない部分もあった。ある程度プロでやった後にすごいと思ったのは、涌井(秀章)ですね。派手には見えないんだけど、キャッチボールをしていると、球がとにかく重いんです。マウンド上でのふてぶてしさも、僕には持ってないものでしたね」

 藤田氏からは、もう一人の名前が挙がった。「牧田(和久)は“奥行きを使う天才”ですね。高低中外だけじゃなく、前後も使う。僕も一応やってはいるけど、彼のレベルには達していませんでしたね」

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