■不倫出会い系サイトの情報が闇ウェブに

 また、シルクロード摘発と同時期には、世界最大の“不倫出会い系サイト”の登録情報が闇ウェブに抜き取られ、インターネット上にばら撒かれるという事件も起きた。「企業の重役から一般人まで、実名や住所まで、ことごとく満天下に晒された。社会的に“死んだ”人も多いですし、実際に自殺者も出る騒動になりました」(同)

 さらに、ここ数年、ヨーロッパを騒がせているイスラム原理主義者たちによるテロにも、闇ウェブが関係しているという。「2015年にパリで130人の死者を出した同時多発テロでも、銃器などの入手には闇ウェブが使用されたといわれています。これらのテロは国内在住の、何の変哲もない市民だったはずの人間が起こしたものも多く、そもそも闇ウェブを通じて彼らをリクルートした者もいる。そして、そうした組織の関係者が入国する際に用いるのは、やはり闇ウェブで入手、または偽造したパスポートだったりもするんです」(ITジャーナリスト)

 こうした物品の取引だけでなく、殺人の依頼、ニセ札づくりの相談など、ありとあらゆる非合法なやりとりが、闇ウェブの世界では行われている。

■取引に使われるのが仮想通貨

 そして、ここでの取引に使われるのが、ビットコインをはじめ、日本でもメジャーになった仮想通貨だ。「仮想通貨は世界各地に散らばったサーバーを使って同時多発的に情報を処理する“ブロックチェーン”という技術を用いて、たとえば日本銀行のような、通常の通貨なら必ずいる中央の管理者を介さずに流通します。ブロックチェーンも高度な暗号技術によって記録を非公開にできるという点で、闇ウェブとは非常に相性がいい。扱っているものの性質上、捜査当局に追尾されないほうが都合がいいということもあり、闇ウェブでの取引には欠かせないものになっています」(前同)

 仮想通貨の特殊な決済システムがなければ、闇ウェブはここまで発達しなかった、とも言える。「逆に言えば、闇ウェブが人間のダークな欲望を“商品化”したことで、仮想通貨がこれだけ爆発的に広まったとも言えます。新技術の普及の陰には、常にドロドロした欲望があるんですね」(同)

 今年1月に日本の仮想通貨取引所「コインチェック」から約580億円分の仮想通貨「ネム」が流出した事件は記憶に新しいが、この事件にも、闇ウェブに潜むハッカーの影がチラつく。「流出したネムを不特定多数の人に送りつけて捜査をかく乱しつつ、2月前半には一部を闇ウェブ上で他の仮想通貨と交換したことも分かっています。捜査当局もその動き自体は把握しているものの、複雑な暗号技術に守られ、追跡ができないという状態なんですよ」(警視庁関係者)

 このネムは極端な例だが、こうした闇ウェブの住人は、常に“商売のタネ”を探している。

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