逸ノ城
逸ノ城

 復活の雄叫びを上げたのは、怪物と恐れられたモンゴルの若武者。3年ぶりに関脇に復帰した幕内最重量力士の知られざる苦闘と魂の叫び! 【取材/文 武田葉月(ノンフィクションライター)】

 4月1日、恒例の伊勢神宮奉納大相撲からスタートした春巡業は、関西、東海地方を経て、下旬には関東近郊へ。延べ1か月間にわたる強行軍となった。8時過ぎから行われる関取衆の稽古には、夏場所で久しぶりに関脇に復帰する逸ノ城が、早い時間から参加していた。200キロを超える巨体を生かした寄りは、相手を圧倒。また、ぶつかり稽古では、積極的に胸を出すなど精力的な動きを見せた。

 2014年、入門から所要5場所で新入幕を果たした逸ノ城は、その場所で1横綱・2大関を撃破。13勝2敗の成績で、殊勲賞と敢闘賞を受賞し、一躍、時の人に。同じくスピード出世した遠藤とともに、相撲ブームの火付け役となった。

 だが、その後、ケガなどの影響で、怪物と称された力強い相撲は影を潜めることに。2016年は90戦中34勝と、成績は低迷した。

 復調の兆しは、昨年の秋場所。8勝7敗と勝ち越すと、九州場所、初場所と連続2ケタ勝利を挙げて、2年半ぶりの三役・小結に昇進。春場所も9勝と好成績を残し、夏場所で関脇の地位へと復活する。

 未来の横綱と期待されながら、足踏みせざるをえなかった理由は何か? ついに復活した逸ノ城に、直撃インタビューを試みた。

■肉体改造して関脇復帰!

――夏場所の関脇復帰、おめでとうございます。巡業中も積極的に稽古をしている姿が印象的ですが、体重は今、何キロあるんですか?

逸ノ城(以下=逸) 今は220キロですね。でも、この体重に落ち着くまでに、いろいろなことがあったんですよ。というのも、新入幕から1年くらいたった頃から、周囲の人たちに「太り過ぎじゃないか」と言われて。その頃は210キロくらいでしたけれど、ダイエットを始めたんです。自分でも体が重いと感じていましたからね。米などの炭水化物を食べないで、野菜中心の生活を送ったら、187キロまで体重が減りました。確かに体は軽くなったんですが、疲れが取れづらいし、力が入らないという悪い影響が出てきてしまったんです。

――そういう面が相撲に響いたということですか?

逸 そうです。自分の形になっているのに、攻められない、勝てない。そんなときに椎間板ヘルニアになってしまい、休場。「逸ノ城は何をやっているんだ!」という声も聞こえていましたし、あの頃は本当につらかったですね。ヘルニアが癒えてからは、トレーニングジムに通い始めて、ゴムチューブで体幹を鍛えたり、下半身の強化にも取り組み始めました。

――肉体改造ですね。

逸 ヘルニアから1年がたった昨年秋場所は、前頭6枚目で8勝と勝ち越したんですが、そのとき、思ったんです。「このままダイエットを続けていては、上には行けない」……と。それで一切、口にしなかった炭水化物を2日に1回は摂るようにして、野菜、肉を多めに取るようにしたんです。すると、体重も少しずつ増えていきましたが、前と違ってトレーニングのおかげで筋肉もついてきたので、スムーズな動きができるようになった。体重の増加で相撲に重みが出てきて、“勝ち”に結びつけられるようになったんです。それが、このところの好調さにつながっているんだと思います。

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