大谷翔平に受け継がれる「イチロー魂」の画像
大谷翔平に受け継がれる「イチロー魂」の画像

 孤高の天才から驚異の二刀流へ。伝説となることが宿命づけられた2人。劇的な一瞬の交錯を経て、そのバトンは確かにつながった!

 ゴールデンウィークの真っ最中、5月4日から行われたメジャーリーグ・マリナーズ対エンゼルスの3連戦は、開幕前から全米の、いや日米の全野球ファンの熱い注目を集めていた。メジャーの歴史を変えようとしている二刀流・大谷翔平と殿堂入り確実といわれるレジェンド・イチローの直接対決が行われる可能性があったからだ。「日本からツアーも企画され、チケットは飛ぶように売れましたが、結局、対戦することはありませんでした」(スポーツ紙デスク)

 エンゼルス戦の直前、マリナーズが重大発表を行ったからだ。それは、イチローが今季は選手として試合に出場せず、新たに会長付特別補佐に就任するというもの。事実上の引退のようにも見えるが、「そうではない」というのは、スポーツジャーナリストの福島良一氏だ。「選手としては戦力外でも、イチローは以前から公言しているように50歳まで現役を続けたいわけですから、その意を汲んだ決定だったと思います」

 このような特別な契約が結べるのは、イチローの数々の業績があってこそ。01年シーズン、海を渡った初年度にア・リーグ新人王とMVPをダブルで獲得。MLB単独の記録だけでも、10年連続200安打、8年連続3割30盗塁、10年連続ゴールドグラブ賞受賞、年間安打数の最多記録262安打を樹立。通算3089安打も含め、偉業を積み重ねてきた。

 そんなイチローが登録名を本名の「鈴木一朗」から「イチロー」に変え、オリックスで年間210安打を放って大ブレイクしたのが1994年。その年に生まれた大谷は、イチローの活躍を、それこそ物心ついたときから憧れの目で見続けてきた。大谷は、イチローとの対決が幻に終わった後、次のような発言をしている。「やっぱりやってみたかった。同じグラウンドでプレーするのは、日本の選手にとってすごく憧れること」

 一方、イチローもまた、マリナーズとの対戦で大谷が3勝目を挙げた直後に、「そりゃ、対戦したいですよ。そりゃ、そうでしょ」と、胸の内を吐露した。「あと3日待ってくれれば、2人の対決が実現したのに」と、日本の野球ファンなら誰しもが思うところ。だが、今のイチローの力では大谷を打ち崩せないというのがマリナーズ首脳部の判断であり、勝率で拮抗するエンゼルスにベストメンバーで勝つという、冷静な考えあってのことだろう。

■日本人メジャーリーガーのキングの座が託された

 イチローが海を渡って18年、その時代の終わりに鮮烈なデビューを果たした大谷翔平。〈このオフ、僕がずっと思っていたのは、(中略)違う選手としてもう一度、翔平と新人王を争いたいってことだったんです〉(『ナンバー』951号) 稀代の天才打者にここまで言わせた二刀流に、その「魂」は託された。

 それを象徴するのが、マリナーズ対エンゼルス戦の試合前に実現した2ショット写真だ。4日(日本時間5日)の試合前、レフト側でキャッチボールを始めようとしていた大谷が、ライト側でチームメートと談笑するイチローを発見。近寄って挨拶しようとしたタイミングで、イチローがいきなり走り始める。突然、始まる鬼ごっこ。大谷はすぐにイチローに追いつき、満面の笑みで握手を求める。快く応じるイチロー。それから2人は、3分間ほど談笑し続けた。「これこそ、2人の“魂のバトンタッチ”。この瞬間、日本人メジャー選手のキングの座は、イチローから大谷に託されたと解釈するべきでしょう」(専門誌記者)

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