小池百合子都知事
小池百合子都知事

 今年10月11日に、ようやく開場が予定されている東京都の豊洲市場。一昨年は土壌汚染問題が取りざたされたものの、安全を高める工事も順調に進み、本来の予定から遅れること2年、ついに築地からの移転にこぎつけた――のかと思いきや……。「今年10月の開場なんて、不可能です。とりあえず、関係者はギリギリまでなんとか努力するでしょうが、1週間ほど前になって、“やっぱり無理です”と音を上げるのが関の山ですよ」と怒りを隠さないのは、東京中央市場労働組合の中澤誠執行委員長だ。

「築地の仲卸業者は550人くらいですが、8割以上が移転に猛反対しています。そもそも土壌汚染にしろ、実際は何も解決してないんです。そのうえ、新市場は設計もひどくて使いづらく、場所も不便でお客さんも来づらい。まったく、いいところがないんです」(前同)

 さらに、「移転の話が出たときは、“豊洲では築地時代より作業スペースは広くなる”という触れ込みでした。確かに面積は広くなりますが、各ブースの入り口が築地より狭くなるため、マグロ屋さんなんかは商品を入れることができなくなるんじゃないでしょうか。また、信じられない話ですが、いまだに製氷機が完成していない。理由を調べたら、“作り忘れてた”ですって」と、ため息をつく。

 問題はそれだけではない。かねてから豊洲移転問題で警鐘を鳴らしてきた、建築エコノミストの森山高至氏が解説する。「築地市場では大卸と仲卸の間はスムーズに運べるように工夫されていたのに、豊洲では両者を完全に別棟に分断、しかも一方は1階、もう一方は3~4階と立体的にも遠くしてしまったんです」

 その他にも、荷捌き場の高さが十分でないため、トラックが横のウイングを開けば天井に当たったり、また、コンセントはおろか、電力が足りないところも出てきそうだという。

■インターネットに衝撃の動画が!

 さらにここにきて、この5月初頭から、わずか4分弱の『豊洲市場の欠陥動線の運用試験』と題された動画がネットに上げられ、関係者の間に衝撃が走った。その内容は、関係者が豊洲市場でトラックや運搬用のターレー車を試しに走らせたもの。

 実際に見てみると、(1)豊洲市場の出入り口の交通事情や、市場内の通路の形状が不適切なため、業者のトラックで渋滞や事故が起きかねない。(2)市場内で荷物を運ぶターレー車の走行においても、きついカーブのために荷崩れ、壁への衝突、また急勾配のためスピードが上がらないなど、同じく渋滞や事故が多発しそう。(3)新市場では、“競り場”と店舗が遠く離されてしまったため、搬送の時間が築地に比べて約6倍もかかってしまう。など、豊洲新市場の構造的欠陥が一目了然だった。

 取材を進めれば進めるほど、開いた口が塞がらなくなるが、では、なんで、こんな“欠陥建築”となってしまったのか。「移転計画を始めた石原慎太郎元都知事は絶対的な権力を握ってましたから、ゴーサインが出されたとたん、都の職員らが現場の声などをまったく調査せず、機械的に急いで設計したからとしか思えません」(前出の森山氏)

 2016年8月に東京都知事に就任した小池百合子氏は、前任者たちが引き起こした豊洲の諸問題を次々に暴き出し、都民のみならず国民からも多大な支持を得たが、「小池さんは、最初はこの問題を深刻に捉えてましたが、途中から議会で議席を獲得することのほうに熱中しちゃったみたいです」(前出の中澤委員長) 面倒な豊洲問題はサジを投げてしまった格好だ。

■石原慎太郎元都知事の罪までもしょい込むことに

 とはいえ、10月の開業を強行しようにも、こんな状況では再延期は必至と言えそうだ。かといって、今頃になって延期を宣言すると、非難が殺到するのは火を見るよりも明らか。「このままだと、石原さんや猪瀬さんの罪までも、小池さんがしょい込むことになりそうですね」(前同)

 東京の中央市場は、どうなってしまうのか。「どのみち、このままでは豊洲に移転するのは無理でしょう。築地市場は老朽化が深刻ですが、物流の効率という点では日本一優れた施設なんですから、ちゃんとリフォームして使うべきですよ」(同)

 東京都民の「食」にかかわる大問題。今後も本誌は注視していきたい。

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