■集団餓死騒動が起きて

 そんな中、北では集団餓死騒動が起きた。「90年代、北朝鮮では貧困によって国家供給が止まり、餓死する人が続出しました。それ以降、自分たちの生活は自分たちで守らなければと、人々が自ら市場を形成するようになったんです。当時は、『運び屋』と呼ばれる卸の仕事が一番儲かった。すると、奥さんを地方に行かせて商品を運ばせている道中、用心棒として同行させた弟分と不倫をした……なんて話を、よく耳にするようになったんです。それでも旦那は、商売のために何も言えない」

■世界で起きている問題を深く考えるきっかけに

 北朝鮮で暮らす人々にも生活がある――。皆、同じ人間なのだ。「金正恩氏は、トランプ大統領との米朝会談を控えています。核やミサイルの問題だけでなく、脱北者や日本の拉致被害者をはじめとした人権問題に触れて初めて、本当の平和に向かっていくのだろうと思います。日本で生まれ、北朝鮮に渡り、韓国で暮らす自分だからこそ、どの国で暮らす人も皆、同じ人間なんだ、と伝えたい。著書を通して、北朝鮮を中心に世界で起きている問題をより深く考えてもらえるきっかけになったら……私はそう、望んでいます」

金柱聖(キム・ジュソン)

関西生まれ。1970年代に朝鮮総連幹部だった祖父母とともに北朝鮮に帰還。同国の師範大学を卒業後、大学講師を経て、朝鮮文学創作社(作家同盟)、国家科学院情報科学通報室などに勤務。2009年に脱北後、韓国サイバー外国語大学日本語学科卒業、北韓大学院大学校社会文化統一修士課程修了。現在は、脱北した青少年たちの支援活動、またテレビ、ラジオなどのメディア出演も行っている。

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