巨人・岡本和真vs西武・山川穂高「新世代スラッガー」徹底比較の画像
巨人・岡本和真vs西武・山川穂高「新世代スラッガー」徹底比較の画像

 鳴り物入りの大型新人もいいが、「ひと山いくら」から突如飛び出すブレイク物語もまた胸躍るもの。今季の出世頭2人をいざ語ろう!

 今季のペナントレースもいつの間にやら全体の4分の1をすぎ、セ・リーグは王者広島を巨人が猛追、パ・リーグは、西武の独走という展開を見せている。両リーグのカギを握る巨人、西武の2球団を引っ張るのは、それぞれ「新世代スラッガー」とも言うべきイキのいい若手打者だ。一人は巨人の岡本和真(21)、もう一人は西武の山川穂高(26)である。「打てばチームも勢いづき、ファンの応援にも力が入る。実力だけでなく、試合のムードを一変させるスター性も持ったバッター。彼らの好調が、チームを支えていると言ってもいいでしょう」(スポーツ紙記者)

■原辰徳監督が惚れ込んでドラフト1位指名

 そんな、今季ノリノリの2人を比較してみよう。まずは、その成績(5月17日時点=以下同)から。岡本は、38試合消化時点で打率.345(リーグ4位)、打点26(5位)、本塁打7本(5位)の堂々たる成績。それもそのはず、強打者を育てることで有名な奈良・智弁学園の出身だ。有原航平(日ハム)、安楽智大(楽天)らが指名された2014年ドラフトで巨人に1位指名されて入団したが、この1位指名には、当時の指揮官・原辰徳前監督の意向が大きかったと伝えられる。「巨人のスカウト部は、当時のチーム事情から即戦力の投手が必要と考え、有原、安楽、山崎康晃(DeNA)、山崎福也(オリックス)らに的を絞っていました。しかし、1位指名を決める最終会議で候補選手の特徴をまとめたビデオを見た原監督が、一発で岡本に惚れ込んでしまったんです」(専門誌記者)

 投手優先を主張するスカウト陣に対して、原氏は、「この岡本っていうバッター、いいじゃない。パワーもあるし、将来の4番候補。1位は投手を外してもいいから岡本でいこう」と“鶴の一声”。まったくのノーマークだった岡本を、巨人は単独1位指名した。

■村田修一の背番号「25」を受け継いで

 だが、15~17年シーズンは、2軍ではそこそこ活躍するものの、1軍に上げられても数字を残せず、また2軍へ……の繰り返し。悩めるプロ生活を送っていた。そんな岡本が“覚醒”したのは、昨オフ、戦力外通告を受けてチームを退団した村田修一の背番号「25」を受け継いでからだ。今年のオープン戦で一塁手として全試合に出場した岡本は4本塁打を放ち、12球団トップの15打点。この勢いで「開幕スタメン」に名を連ね、開幕2戦目の3月31日にプロ入り初の猛打賞となる4打数4安打(1本塁打)と大暴れ。続く4月1日の試合では逆転3ランを放って、阿部慎之助から一塁手の座を奪い取ってしまったのだ。「現在の岡本の活躍ぶりを見ると、原前監督の慧眼には恐れ入ります。やはり、あれだけの実績を残した監督だけに、見るべきところは見ている、ということなんでしょうね」(前出のスポーツ紙記者)

 だが、もちろんブレイクの秘密は才能だけではない。岡本の変身のきっかけは、徹底的な「自己変革」という。野球評論家の黒江透修氏は、こう語る。「岡本は昨オフ、徹底的にバットを振ったようですね。この練習の裏づけが自信につながり、今の好結果を生んでいるんでしょう」

 春のキャンプで直接指導を受けた松井秀喜臨時コーチに対しても、「伝説の大打者を前に委縮する選手も多い中、岡本は“もっと教えてください”“もう一丁、いや二丁、お願いします”と前のめりに教えを乞うていました。プロ4年目、背番号25を受け継いだものとしての強烈な危機感や使命感が、彼の“覚醒”を促したんでしょう」(前出の専門誌記者)

 昨年までのコンパクトなスイングから、今年は高校時代を彷彿とさせるようなフルスイングが復活。さらに、ボールを迎えにいかず、引きつけてから打つ“心の余裕”もできている。「5月15日のヤクルト戦で見せたような、逆方向へカッ飛ばす特大7号本塁打も、去年までなら出なかった一発。自分でも、大いに自信がついているはずです」(前同)

 ただし、まだまだ課題もある。「状況に応じたバッティングが完全にできているわけではない。そこはまだ改善の余地がありあます。ここは自由に打ってもいい場面、ここはランナーを進めるバッティングをするべき場面……という状況判断ができるようになれば、もっといいバッターになれるはずですよ」(黒江氏)

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