■ピロリ菌は胃がんを誘発

 炎症も、がんリスクの大きな要因の一つとなる。「炎症が発生すると細胞が繰り返し修復されるのですが、その過程でDNAのコピーミスが増えてしまい、これが、がんの元になります」(前出の牧氏)

 その典型が、胃壁に棲みつくピロリ菌だ。ピロリ菌は胃がんを誘発することが分かっているが、「ピロリ菌がいることで慢性的な炎症が発生し、がんの原因となります。なので、ピロリ菌がいる人は早期の駆除が望まれます」(前出の医療ジャーナリスト)

 また、B型、C型肝炎ウイルスは肝臓がんの原因となり、ヒトパピローマ・ウイルスは子宮頸がん、白血球ウイルス1型は白血病やリンパ腫の引き金となる。こうしたがん誘発ウイルスを体内に保菌していないか検査を受けて、しっかり治療することも大切だ。

■お笑い番組や恋愛で免疫力強化

 がんは40~50代から急増するのだが、これは免疫力が落ちることも大きい。逆に言えば、免疫力をしっかり保つことは、がん予防につながるのだ。「漢方医学では病気にならないために体を温めること、冷やさないことが大切だと説いています。実際、深部体温が1度下がると免疫力が33%下がるという研究もあります」(前出の田村氏)

 これから暑くなる季節だが、冷たい飲み物やビールをあまり飲み過ぎないことも小さな努力であり、冷房が効きすぎる場所で寒いと感じながら長時間過ごすことも、できれば避けたい。「体を冷やす食材を食べ過ぎると免疫力を低下させます。一般的に南の食べ物や夏の食材は体を冷やすように働きます」(前同)

 また、夏場はついシャワーだけの入浴になりがちだが、浴槽でお湯に浸かり、体温をキープすることも大切だ。「オススメは、松葉を入浴剤代わりに浴槽に入れることです。体を温めるうえ、香りが良いのでリラックスできます」(同)

 免疫力をストレートに上げる食材として筆頭に挙げられるのが、キノコ類だ。「メシマコブなどをはじめ、キノコ類にはがんに効果があるとされるものが多く、免疫細胞の中でも特にリンパ球を増加させる働きがあるとされています」(同)

 免疫力はストレスや心の持ちようでも、大きく上下する。実際、がん患者や、うつ病患者に落語を聞かせると免疫細胞が活性化するという報告もあるのだ。「お笑い番組を見て笑うことは、手っ取り早いがん対策と言えます。さらに、異性との交流や恋愛は、気持ちを浮き立たせる“最強の免疫強化術”とも言われますからね」(医療関係者)

 ウォーキングや散歩も免疫力を上げるが、田村氏は樹木が多いコースを歩けば、さらに免疫力がアップするという。「樹木が発する芳香物質が、ストレス軽減に効果があるのです」(田村氏)

“がん世代”といわれる退職前後の男性にお勧めしたいのが、家事を手伝うことと、図書館や漫画喫茶など家以外の自分の居場所を持つことだという。実は、これらの行為が、妻との間のトラブルを軽減してストレスを減らすため、がん予防になるというのだ。

 がんは遺伝的な問題もある。米国の女優、アンジェリーナ・ジョリーが遺伝子検査でがん発症リスクが87%と診断されて、手術を受けたのは有名だが、ここまでやらなくても、“がん家系”の人は、こまめにがん検診を受けるようにしたい。

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5