■プレッシャーを利用してテンションを高めていく

 天才と謳われた羽生氏もスランプを感じていた時期があった。そんな時にはどうやって不調を脱出したのだろうか。

「結果が出ていないのが実力なのか、不調なのかを見極めるという事を最初にします。実力ならば努力をして一生懸命頑張ります。不調というときはやることは間違っていないけど、まだ形にはなっていない状態です。その時は気分を変えるのです。どんなことでもいいのですけど、服装を変えたり、部屋の模様替えをしたり生活の中にアクセントをつけて不調の期間を乗り切ります」

 羽生氏は、勝負事の中で生まれるひらめきなど、直感の7割は正しいという。

「直感って適当に選んでいるものではないのですよ。自分自身がいままで経験したことや学習したことが瞬間的に表れているものなんです。だから一生懸命やってきたことに関してはそこそこの精度はある。だけど7割しか当たっていないので、より精度を上げるためにちゃんと裏付けを取ったり、感覚的な判断をしたり確認作業は必要です」

 何事にもつきまとうプレッシャー。羽生氏はそれを上手に活用することで能力を引き出すことに繋がるという。

「プレッシャーはあるのですけど、ある程度ほどほどにはあったほうがいいと思っているんです。よく使われる表現で“身が引き締まる思いです”という表現があるじゃないですか。悪い緊張の時って身が強張っているといいます。だから引き締まっているという、適度に力が入った状態を目指してテンションを高めていくことを考えています」

 インタビューでは、その他にも、普通の子どもが天才になる「独自思考法」、「AI時代に勝つ脳の作り方」などについても語った羽生氏。『羽生善治竜王と藤井聡太六段 普通の子供が天才になる11の「思考ルール」』では、渡辺明棋王、谷川浩司九段ら9人がインタビューに答え、それぞれが子供時代の「独自教育法」、勝つための「独自哲学」、天才棋士・藤井六段がなぜ作られたのかなどが語られる。決断を迫られるビジネスマンや、普通の子どもを天才に育てたい親たちも必読だ。

羽生善治(はぶ・よしはる)
1970年9月27日生まれ。埼玉県所沢市生まれ、東京都八王子市育ち。1985年に中学生でプロ棋士となり、1989年、初タイトルとして竜王位を獲得。十九世名人、永世竜王、永世王位、名誉王座、永世棋王、永世王将、永世棋聖、名誉NHK杯選手権者の資格保持者。家族:妻、二女 趣味:チェス 座右の銘:玲瓏

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