自らもメジャー経験のある野球評論家の藪恵壹氏は、それに加えて、レフト方向、ライト方向構わず、広角に打てる技術と足の速さがあることが、打者としての大谷の強みだという。「特に、弱点となるポイントがあるわけでもないしね。投げるほうからすれば厄介なバッターですよ」(藪氏)

 さらに、走者としても大谷は一級品という。「大きい体からは想像できない俊足ですし、手からベースに滑り込むときは、普通なら利き手の右手から行きそうなところですが、ケガしないよう、必ず左手で行く。冷静さもすごいですね」(専門誌記者)

■まだメジャーリーグのマウンドにアジャストしていない

 一方、投手としての大谷は、まだ完全にメジャーのマウンドにアジャストしていないのではないかと、前出の山崎氏は言う。「よく言われることですが、日本とアメリカではマウンドの傾斜も違うし、ボールの大きさも違う。まだまだ日本にいたときのように、ボールを自在に操れてはいないような気がします」

 しかし、それでも4勝を挙げ、圧巻の奪三振ショーを見せているのだから恐ろしい限りだ。実は、山崎氏は2013年に、高校を卒業したばかりの大谷と対決している。「荒削りでしたが、球は速かったですね。ただ、コントロールが安定していなくて、どうしてもボールが先行してしまうきらいがあった。そのときはツーベースを打ちましたけど、まだ、大谷も下半身が完成してませんでしたからね」

 その後、徐々に大人の体つきになった大谷は、コンスタントに160キロの速球を投げることのできる投手となった。前出の藪氏が語る。「もちろん、160キロの球なんて誰でも投げられるものではありませんから、彼にとってはやはり大きな武器だと思います。しかし、ただ速いだけだと、メジャーのバッターは、目が慣れれば簡単に打ってしまう。ですが、大谷は緩急をつけられる多彩な変化球を持っています。投手としては、それが大きな強みですね」

 開幕当初、大谷はストレートと「エグい」と地元の実況アナが評したスプリットで、三振の山を築いた。それで「少しスプリットを多投しすぎじゃないか」と心配されたものの、登板回数が増えるにつれ、スプリットだけに頼らず、スライダー、カーブなども織り交ぜた多彩な投球を持ち味とするようになってきた。「いろんな球を投げられるから、次に何が来るか分からない。だからこそ、たまに来る真っすぐの速い球が効果的になるんです。メジャーには、変化球を待ちながら、真っすぐが来たら、それに対応できるバッターはいるんですが、それでも大谷の球には対応できていないですね」(藪氏)

 むむむ、これは投手か打者か、なかなか甲乙つけがたい……。とはいえ、いずれかは“どちらか”を選ぶときも来るという。「どんな速球投手でも、ピークを過ぎれば、球速は落ちてきます。そのとき、多彩な変化球を使う技巧派投手として生き残るのか、それとも、打者に絞るのかは彼自身の選択ですが、私は、野球を長くやろうと思うなら、打者に絞ったほうがいいと思いますね」(藪氏)

■ベーブ・ルース超えは確実!

 だが、同じ二刀流として、大谷が間違いなく意識しているのは、“神様”ベーブ・ルースの存在。1914年、レッドソックスに投手として19歳で入団したベーブ・ルースは、入団3年目には23勝、防御率は1.75と投手として優れた成績を収めていた。そんな彼が二刀流に転向したのは1918年。この年、20試合を投げ、13勝7敗、防御率2.22をマークし、11本塁打を放って本塁打王に輝いている。同一シーズン2ケタ勝利&本塁打の記録は、その後、誰にも破られていない。「ケガをせず、現在のペースで勝ち星と本塁打を積み重ねていけば、十分に達成可能な数字です」(前出の専門誌記者)

 ルースを超え、どこまで“二刀流”で登っていくか。長い選手生活、いずれはどちらかを選ぶにせよ、今は若き大谷の挑戦を、固唾を飲んで見守ろうではないか。

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