平成最後の日本ダービー、2015年に誕生したサラブレッド6955頭の頂点に立ったのは、ワグネリアンでした。父はディープインパクト。母父はキングカメハメハ。ダービー馬の結晶ともいうべき血を受け継いだワグネリアンの競馬は、まさしく王者のそれでした。管理する友道康夫先生にとっては、16年のマカヒキに続く2度目の栄冠。金子真人オーナーは、史上最多となる4度目のV。そして――19度目の挑戦で、ついにダービージョッキーの称号を手にしたのは、福永祐一騎手です。

 ユーイチ、おめでとう! 勝ったものだけに許される日本ダービーのウイニングランも、シャワーのように降り注ぐ大コールも、歓喜の涙も、すべて、ユーイチがその手で勝ち取ったものです。すべての関係者が拍手で迎えてくれるのも日本ダービーだけだし、会う人ごとに、「おめでとう!」という言葉と、「よぉ、ダービージョッキー!」と声をかけてくれるのも、日本ダービーだけ。僕ら騎手は、このために、このためだけに一年を戦っているといってもいいほどのうれしい瞬間です。

――それまでとは、見える景色が変わる。どこがどうとは言えませんが、日本ダービーを取ったことで、昨日まで見えなかったものが見えてくるというのは、間違いなくあります。単純なことですが、――ダービーを取れる馬って、どんな馬なんだろう? そんなことを考える必要もなくなります。

 僕にとってスペシャルウィークが基準になったように、ユーイチにとって、これからはワグネリアンが基準になるはずだから。同時に、――ダービー馬の背中を知っている。このことは、騎手にとって、かけがえのない大きな財産になります。

 これを生かせるかどうかは、今後の彼次第。でも、ユーイチなら大丈夫。殻を破ったユーイチを想像すると、ライバルとしては、やや、うんざりしますが(苦笑)、世界を相手に戦う同じ日本人騎手の仲間としては、心強い限りです。

■G3エプソムカップでスマートオーディンと!

 日本ダービーが終わり、競馬カレンダーは、また今日から新しい一年の始まりです。どんな馬とめぐり逢い、どんな馬とともに、またこの大きな舞台に帰って来ることができるのか!? 新しい時代の幕開けが、今から待ち遠しくて仕方がありません。その第一歩……今週末、6月10日は東京競馬場で、スマートオーディンとG3「エプソムカップ」(芝1800メートル)に挑戦。新馬戦では、ダノンシティとコンビを組み、2019年のクラシックに向けた一歩を踏み出す予定です。

 禍福は糾える縄の如し。いいことも、そうじゃないことも、たくさんあると思いますが、それでも僕には競馬がある。今より、もっと、もっともっと、競馬の神様に愛される騎手になれるように頑張ります。

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